「東大&京大」合格者数全国トップ10入り!“西大和学園”が躍進した理由大阪南部との府県境にも近い「王寺」が最寄り駅となる学園を一望する。二つの男子寮に在校生の1割強が暮らしている 写真提供:西大和学園中学校・高等学校 

2022年の東京大学合格者数で、開成、灘、筑波大学附属駒場、聖光学院に次ぎ、西大和学園は5位にランクインした。共学校ではトップとなる。京都大学の合格者数もランキング10位であり、日本中を見回しても、両方に名を連ねているのは奈良の西大和と神戸の灘の2校しかない。首都圏では知られざる存在だが、1986年の高校開校以来、トップ進学校への道を歩んできた。その躍進のきっかけは何だったのか。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

「東大&京大」合格者数全国トップ10入り!“西大和学園”が躍進した理由

飯田光政(いいだ・みつまさ)
西大和学園中学校・高等学校校長

 

1974年神奈川生まれ。大阪教育大学卒業後、理科教員(生物)として西大和学園に。理科主任、学年部長を歴任し、2020年度には渉外室で生徒募集部長、21年度教頭、22年4月から現職。

 

東大・京大合格者数で全国ベスト10に

 10年前、2012年の西大和学園の東大合格者数は16人で、奈良県内では男子校の東大寺学園と比肩するものの、全国区で話題となる超進学校ではなかった。ところが5年前から、文字通りうなぎ上りで合格者数を増している。いったい何があったのだろうか。

――関西圏の学校がこのコーナーに登場するのは初めてです。2022年も、東京大合格者数ランキングで大進撃されましたね。

飯田 21年よりもさらに子どもたちの夢をかなえることができて、過去最高の79人(全国ランキング5位)となりました(図1)

――西大和さんといえば、京都大のランキング上位校という感じでした。

飯田 21年には、京都の洛南さんにつぐ63人(全国ランキング2位)の合格者を出しました。今年も多くの子どもたちが受験しましたが、こちらは40人(同10位)しか合格させてあげられませんでした。東大の志望者が増えると、どうしても京大の志望者が減ってしまいます。

「東大&京大」合格者数全国トップ10入り!“西大和学園”が躍進した理由[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――両方とも毎年伸ばすというのは難しいものですね。ところで、東大の合格者を増やそうとカジを切ったきっかけは何だったのでしょう。

飯田 本校は変革し続ける学校です。創立当初は関西私大を目指す学校でしたが、子どもたちの志望や成長に合わせ、目標もどんどん上げていきました。

 また、大阪の府立高校が学区制を止めて、2011年度から進学指導特色校(グローバルリーダーズハイスクール)を導入して、北野や天王寺など10校を指定したこともありました。このまま放っておくと、こうした学校から京大合格者数がとんでもなく増えるのは予想できたので。

――その危機感からでしたか。

飯田 大阪の私立高校生には就学支援金は出ますが、大阪から奈良の私立高校に来る生徒には適用されません。それでも本校に来てくれるのはありがたいことです。

 奈良から大阪の私立高校に3000人を超える生徒が通っている状況を前に、創始者で県議会議員(のちに衆議院議員)だった田野瀬良太郎元理事長が「日本一の進学校をつくろう」と、1986年に高校(共学校)を、88年に中学校(男子校)をそれぞれ開校したことから本校の歴史は始まっています。

――奈良県内でも、大阪寄りにありますしね。ところで、東大進学へのモチベーションというのはどのように。

飯田 奈良のこの地でどのように存在価値を出すのかと、日々議論しました。京大を受験したい子どもたちは入ってくれるようになりました。しかし、近畿にとどまるだけでなく、どう世界で活躍するのか。そこで、当時の数少ない東大に進学した卒業生を呼んできて、講演してもらう機会も作りました。

「東大&京大」合格者数全国トップ10入り!“西大和学園”が躍進した理由「自宅から通える京都大ではなく、東京大を目指すことで可能性も視野も広がる」と卒業生が熱弁をふるった講演会の様子 写真提供:西大和学園中学校・高等学校