手術の際、皮膚や組織を縫い合わせるために使う「縫合針」。ニッチな製品だが、メーカーの生存競争は激しい。昭和30年代から40年代前半にかけて、国内に縫合針メーカーは30社程度あったようだが、現在では数社しかない。その中で生き残っているのが、従業員がわずか70人の老舗「医研工業」だ。現在は日本だけでなく中国などに進出しているが、いかにして国際競争力を獲得したのか。(ルポライター 吉村克己)
中国を中心に「縫合針」輸出
「淘汰の時代」を生き残る
手術に欠かせない縫合針の専業メーカーとして、世界屈指の技術を持つ企業が医研工業だ。同社は1966年の創業以来、縫合針の製造技術を磨き続け、中国を中心とする海外に輸出している。
従業員数は、パートなどを含めてたった70人だが 、海外売上高比率は30%を超えている。いわば、小さなグローバルメーカーだ。
「中国だけではリスクが高いので、東南アジアにもサンプル出荷を始めています。これから人口が増えていく国々、例えばインドやアフリカなども狙っていきたいです」
同社の2代目社長である中山慎一郎(49歳)は、今後の意気込みをこう語る。
昭和30年代から40年代前半にかけて、国内に縫合針メーカーは30社程度あったようだが、現在では数社しかない。そのうちの1社は、外資系大手のジョンソン・エンド・ジョンソンだ。
外資系大手が幅を利かせる厳しい競争環境で、中小企業である医研工業が生き残れているのはなぜか。