北海道と本州を結ぶ貨物列車は、道民の生活と経済を支えるとともに、食糧基地である北海道から全国への安定供給を担い、特に道外への農産品輸送においては鉄道利用が4割を占めるに至っている。この重要な物流機能が、2030年度に計画される北海道新幹線の札幌延伸を受け、存続の危機にさらされている。「青函ルート問題」と総称される同問題は、これまでも鉄道輸送関係者らの間で取り沙汰されてきたが、30年度が迫るなか、現実的なリスクとしての認識が北海道経済界や物流業界全体へ広がりつつある。青函ルート問題とは何か、解決策はあるのか――。「リソース不足が進行する物流業界において、サプライチェーン全体の“バランス”を崩壊させる重大な危機でもある」と警鐘を鳴らす、全国通運北海道支社の河野敏幸次長に伺った。(インタビュアー/大澤瑛美子)
北海道~本州の貨物列車をめぐる
「青函ルート問題」とは
――「青函ルート問題」とは、どのような問題なのでしょうか。
2016年に新函館北斗~新青森駅間で開通した北海道新幹線は、貨物列車の運行を維持しながら走行しています。しかし、新幹線の札幌延伸時については、二つの理由から、貨物列車の運行を続けるのが非常に困難な状況にあります。
一つは、新幹線の開通に伴ってJR北海道から経営を分離される「並行在来線」の存廃です。貨物列車は並行在来線の線路を使って運行しており、その維持が、北海道と本州を結ぶ貨物列車の運行を継続できる大前提となります。
その上で議論されるべきもう一つの問題が、北海道新幹線と貨物列車が同じ線路を走る「共用走行区間」の在り方です。共用走行区間は青函トンネルを含む82キロメートルを指します。北海道新幹線は今、すれ違う貨物列車の安全が確保できないことから、共用走行区間において速度を落として走行しています。しかし、2013年3月、当面の方針として開業1年後の1日1往復の常時高速走行化が取り決められており、それが実現には至っていないなか、この区間で貨物列車といかに“共存”するかが問題になっています。