「仕事のミスを減らす秘訣」をMITの博士が解説、3つの要因と対処法とは写真はイメージです Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

KDDIやスシローも直面した
「人為的ミス」の恐ろしさ

 メディアで大々的に報じられ、SNSなどでさまざまな意見が飛び交う事件や事故には、たいてい悪意のない人為的ミス(ヒューマンエラー)が絡んでいることが多い気がする。

 数え上げればキリがないが、最近の人為的ミスによる事故と聞いて、真っ先に挙がるのは、7月初めに起こったKDDIの通信障害ではないだろうか。

 2022年7月2日未明から4日の午後まで影響が残ったこの障害は、ルーターの設定ミスが原因だったと報じられている。

 その結果、一般の携帯・スマートフォンユーザーのみならず、宅配便やバスの運行案内など、いくつかの社会インフラの不具合も招いた。

 それに比べれば影響は小規模だが、直近では回転ずしチェーンのスシローに、消費者庁から景品表示法違反の措置命令が下された「おとり広告」の問題も印象に残っている。

 テレビCMなどで「格安で販売する」と告知していたウニなどの握りずしを、結局ほとんどの店舗で販売していなかったこの問題は、消費者を「だましてもうけよう」という悪意があったと疑われている。

 だが一方で、複数の報道や分析記事を読む限り、連絡ミスやマニュアルの不備・不徹底など、ヒューマンエラーの要素が大きかった可能性もあるように思える。

 今回紹介する書籍『ERROR FREE 世界のトップ企業がこぞって採用したMIT博士のミスを減らす秘訣』は、こうした巨大な損失や危機を呼び込みかねないヒューマンエラーの防止策がテーマである。

 具体的には、さまざまなミスのパターンやメカニズムに関するビッグデータを分析し、エラーフリー(エラーが起こり得ない状態)を作り出すヒントを紹介している。

 著者の邱強(きゅう・きょう)氏は、中国の清華大学を卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学。MITでは、機械と原子力エネルギーの研究で博士号を取得した。現在はMITの専門家を主軸とするチームを率いて、エラーを防ぐメソッドの研究開発などに携わっている。