8月下旬、ファーウェイ創始者が社内向けに発表した経営指針が、経済メディアやSNSで大きな話題になった。「今後10年、世界経済は衰退を続ける」「ファーウェイは規模追求をやめ利益確保を目指す。まずは2年生き延びる」「社員一人ひとりに寒気を感じてもらう」といった厳しい内容に、その翌日中国株式市場はストップ安になったほどの影響だった。2019年に米国政府の制裁対象となって以来冬の時代が続いている同社だが、なぜ創業者の言葉がここまでの不安を引き起こしたのだろうか?(フリーライター ふるまいよしこ)
ファーウェイ創始者の発言をきっかけに、株価がストップ安
《もし、予定したとおり2025年に一縷(いちる)の希望を見つけるには、まずはこの3年の困難な時期をいかに乗り切るかを考える必要がある。生存の基盤をキャッシュフローと利益中心に調整する。もはや売り上げだけを目指していてもだめだ。2023年、24年は我々にとって苦しい時代となるはずで、それを突破できるかどうか、今は予断を許さない。だから、これからはうるわしい物語ではなく、現実を語らなければならない。特にビジネスについては幻想を抱かず、会社をだますような話をしないこと。損失はあなたたちの生活の糧から差し引く。まずは生き残ること、生き残ってこそ未来がある。》
8月23日、中国メディアが通信機器大手「華為 Huawei」(以下、ファーウェイ)創業者、任正非氏による、こんな言葉が並ぶ社内向け経営指針が発表されたと伝えた。続いて各経済メディアが「あのファーウェイが経済衰退に警鐘」と大きく伝え、SNSでも広くその内容がシェアされ、話題になった。
さらに、翌24日には中国株4400銘柄が下落、特に同社が属するエレクトロニクス分野では大規模なストップ安まで起きるという事態になった。
しかし皮肉なことに、当のファーウェイは社員持ち株制を取っており、上場していない。非上場企業であるファーウェイの新しい指針が、なぜそれほどの衝撃をもたらしたのか? そして任正非氏の発言から、中国経済界は何を読み取ったのか。