中国ではテレビショッピングのネット版ともいうべき「オンラインコマースサービス」が盛況で、人気のキャスターは大金を売り上げる。6月、ある男性が4日連続、毎日1000万元(約2億円)以上を売り上げたと話題になった。無骨な農村青年そのものといった風貌の彼の正体は……。(フリーランスライター ふるまいよしこ)
中国版少子高齢化対策「双減政策」の衝撃
起死回生とはこのことか。
昨年7月末、中国政府は突然、「義務教育段階の学生の作業負担および校外研修の負担を軽減するための意見」と名付けた新しい教育政策を発表した。俗に「双減政策」と呼ばれるそれは、中国政府にとってここ数年大変頭の痛い問題となっている少子化高齢化対策の一環として、子どもを産み、育てる親たちが直面する教育費用の高騰を軽減することを目的としたものだった。
その発表とともに、ついその前日まで子どもたちが「いつものように」通っていた学習塾、ピアノ教室、さらにはダンス教室に至るまですべてが閉鎖となり、昨年末までにその80%以上の学習塾が消滅した。政策を推進する中国教育部は、「校外教育関連の広告はすっかりなくなり、業界に投じられていた資金も撤退した」として、「野放し成長は有効的に抑制された」とその成果を強調した。
だが、この政策が社会にもたらした衝撃は大きかった。
校外教育業界は、自身も高等教育を受けて「中産階級」であることをエンジョイする親たちが我が子に向けた教育熱を受け、このところ倍々ゲームで成長を続けてきた。特に2020年の新型コロナ感染拡大によってオンライン教育システムが強化され、それに伴って教育関係者のみならず、ゲームや金融、生活サービスなど人気サービスがこのところ次々と規制を受けて苦しむIT業界においても、最も成長が期待されていた花形分野だった。
「双減政策」の実施は、あっという間に200万人を超えるといわれる人たちの職を奪った。主に現場でこの花形産業を支えていたのは、高等教育を受けた若い教師資格者やエンジニアたちであり、文字通り公においても私においてもこれから子供を育てていく人たちだった。「失業のおかげで、子供を育てたくても産むことすらできない」という嘆き声も上がった。