また、中国の電力の65%以上を工業施設が使用していることを考えると、電力不足によって世界のサプライチェーンが混乱することはもちろん、工場の操業を進めるために中国各地で計画停電が実施される可能性もある。そうなれば、住人の生活に支障を来し、コロナ禍の行動制限以上の悪影響を半永久的に与えかねない。

 そのような条件下で、中国共産党がこれまでどおり人民を支配することが可能なのだろうか。人民がこれまで水危機を隠蔽してきた当局に対して反発心と不信感を強めるのは間違いなく、それが「中国共産党への抗議活動」に発展する可能性は決して小さくはないだろう。

 さらに懸念されるのが、水不足が解消不可能と悟った人民が「水難民」として国外脱出をはかることだ。10億人が水危機で生活困難になり、大量の移民が出るとすれば、日米には中国から莫大な数の移民希望者が押し寄せる可能性がある。

 とくに中国資本に買われている北海道は、中国人が住みたいと思っている地域だといわれており、最初に狙われることになるだろう。そもそも、中国資本による北海道の土地買収、とくに水源を含む土地の買収は、中国の水危機と無関係なものなのだろうか。

 中国の水危機は「対岸の火事」ではなく、日本を含む世界の危機でもある。これから備えておくに越したことはない。

 日本政府は中国からの移民や難民をどれくらい受け入れるつもりなのか。あるいはきっぱりと拒否するつもりなのか。まずはその点を明確にして、対策を考えるべきである。

(評論家・翻訳家 白川 司)