老後の資金を貯め込むのではなく、生きているうちに使い切って死ぬことを提唱する話題の1冊『DIE WITH ZERO』。「少しでも早い時期に、経験にお金を使うべき」と、著者のビル・パーキンス氏は語るが、「そうは言っても、子どものためにお金を残してあげたい」と考える人も多いのではないだろうか。子を持つ親であれば当然の反応である。本記事では、本書の内容をもとに「自分のためのお金と誰かのためのお金をどう切り分けるか」「子どもに財産を最大限効果的に渡すにはどうしたらいいか」などについてご紹介する。(構成:神代裕子)
「死後」が相続のベストタイミングではない
人生で、本当にしたいことをできる時間というのは限られている。だからこそ、老後の資金のために、今この瞬間の楽しみを我慢してはいけない。
老後のための貯蓄に一生懸命になりすぎてはいないだろうか。本書は、私たちにそのように問いかける。
しかし、そうは言われても、「お金を使い切って死ぬこと」への抵抗がある人もいるのではないだろうか。
特に、子どもがいる人は「子どものために、遺産を残してあげたい」と思う人が多いはずだ。
中には、「子どものことを考えずに、お金を使い切ってしまうなんてあり得ない」と憤る人もいるかもしれない。
しかし、あくまでも使い切るのは「子どもたちに与えるべき金を取り分けた後の、残りの自分のためのお金」だ。
そして、その子どもたちに残すと決めたお金は、死んでから相続させるのではなく、もっと早いタイミングで、お金の価値を最大限発揮できる時に与えなければならない。
ビル・パーキンス氏は、その理由を次のように語る。
人が一番お金を必要とするのはいつごろか、考えてみてほしい。
結婚している人であれば、子どもが産まれて家を買う時や、子どもたちが高校や大学に進学する時ではないだろうか。
家計に余裕がない家庭の場合は、子どもが小さい頃に遺産をもらうことができれば、生活費のために必死に働かなくても子どもたちのそばにいてあげることができるかもしれない。
しかし、多くの人が相続する60歳の頃には、一番お金がいる時期はとっくに過ぎてしまっているケースがほとんどだ。
つまり、子どもにお金を分け与える場合、自分が死ぬまで待つのは最適ではないということになる。
「26~35歳」がお金の価値を最大限に享受できる
では、子どもにお金を分け与える最適なタイミングはいつなのだろうか。
若過ぎては資産管理をするのが難しいが、遅ければ良いというわけでもない。譲り受けた財産から価値や喜びを引き出す能力は、年齢とともに低下するからだ。
自分の親で考えてみるといい。買い物にしても旅行にしても、年を重ねるごとに楽しめなくなっているのではないだろうか。
段々と「旅行に行こう」と誘っても億劫がったり、「歩くのが疲れる」と嫌がったりするようになってくる。何かを楽しむには、最低限の健康や体力が必要なのだ。
親が財産を分け与えるのは、子どもが26~35歳の時が最善だ。お金を適切に扱うだけの判断力と、そのお金から得られるメリットを十分に享受できる若さがある年齢だからだ。
本当に子どものために財産を残したいのであれば、金額だけでなくそのタイミングもしっかり考えておかなければならない。
お金は「必要な時」に使わなければ意味がない
これは、寄付であったとしても同じことが言える。
もし、何か支援したい慈善団体があるのであれば、死後まで待つ必要はない。なぜなら、その団体は「今」抱えている問題に対して活動をしており、「今」すぐに寄付金を必要としているからだ。
寄付する先が薬や医療の研究であれば、その寄付金を使って研究が進められるようになる。
つまり、お金は他の人に与える場合であっても「使い時」があるということだ。
子どものためのお金であれば、その子が最大限、そのお金を活用できる時期を見極めなければならない。
その方が、あなたが死んだ後に思いがけず転がり込むお金より、ずっとずっと価値が高くなるのだ。