バスのイメージ写真写真はイメージです Photo:PIXTA

9月4日の深夜に京都駅付近で起きた“乗客置き去り事件”がネットで話題です。投稿される大半の意見は、バス会社に批判的です。でも、三つの視点で考えると、私はバス会社は「正しい」と思うのです。実はこの問題、日本社会の大きな欠陥についての問題提起につながります。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

“乗客を深夜の街に降ろして置き去りにして逃げた”
京都駅で騒動が勃発

 今週、ある事件が起こりました。9月4日の22時10分に大阪を出発して東京に向かった夜行バスのエアコンが故障して、京都駅で運行中止になったのです。

 37人の乗客はそこで降ろされて、バス代分に上乗せして新幹線で東京駅まで行けるように1万5000円を後日支払うという説明があったそうです。

【注】:本記事で取り上げる事件には、複数の乗客と乗務員の証言が食い違っている点があります。ビジネス事例として扱う記事ですが、細部の情報に不確実な点があることはご容赦ください。

 エアコンが故障した車内では走行途中に温度が上がり、「サウナ状態」だったという証言もあります。このまま運行すると熱中症や体調不良のリスクがあるという会社の判断を受けて、次の乗車場所でもある京都駅前で乗客に運行中止が伝えられたのが23時55分でした。

 問題はここから起きました。一部のお客様がその対応では納得できないと抗議し始めたのです。

 確かにすでに新幹線の終電時刻も過ぎ、京都駅で降ろされた乗客は始発の朝6時14分までどこかで時間をつぶさなければなりません。宿泊代も出してほしいと要求する人が出たようです。中でもひとりの乗客は激高して、警察官が出動する事態になりました。

 そして深夜0時50分、怒る乗客を2~3人の警察官がなだめているときに突然、乗務員2人がバスに乗り込んでその場から立ち去ってしまったのです。

 乗務員に「置き去りにされた」乗客は、驚きのあまりぼうぜん。SNSにこの騒動をツイートして、ネット上で話題になったというのが事件の推移です。

 この事件は、“乗客置き去り事件”として多くのメディアにも取り上げられました。ネットのコメントを見ても大半の意見はバス会社に批判的です。

「もっと良い対応があったはず」

 それは間違いないのですが、この事件、ネットの空気は正しいのでしょうか。

 多数意見に反論することになるため、この記事も炎上してしまうかもしれません。でも、実はこの問題、日本社会の大きな欠陥についての問題提起にもつながる話です。みなさんの直感に反するかもしれませんが、私からの「別の意見」に少しお付き合いいただければと思います。

 この事件について、以下の三つの異なる視点から問題提起をしてみたいと思います。

(1)乗客の権利
(2)乗務員の権利
(3)会社の損得