上昇する物価と、上がらない給料、そして将来への先行き不安。そんな状況から「投資」を始めた人も多いのではないだろうか。しかし多くの日本人は「投資」と「投機」を混同している。「投資」は、短期間に株の売買を繰り返すことではない。選び抜いた企業のオーナーとなり、その成長を長い期間で楽しむのが「投資」だ。企業を選び抜くには、さまざまな分析と考察が必要である。その思考法が書かれたのが『ビジネスエリートになるための 投資家の思考法』(奥野一成)である。「投資家の思考法」を身につければ、投資はもちろん、あなたのビジネスも成功に導かれるはずだ。
「日本円」に偏らないポートフォリオを作れ!
米国企業の株式など海外資産に投資をする際に、「為替リスクが怖い」という声をよく聞きます。実際、為替は短期的に大きく動く場合もありますし、その動向を先読みすることは不可能なので、その不安もよくわかります。
2022年9月現在、1ドル=140円を超えて年初来で15%程度円安が進んでいます。もしかしたら「日本が後進国へ逆戻り」という最悪のシナリオの入り口にいるのかもしれません。個人的にはそのようなことは起こってほしくないと思っていますし、実際には日本が後進国化する可能性は極めて低いと考えています。
とはいえ、日本国そのものの凋落可能性が少しでもあり、日本円が購買力を今後も大きく失うかもしれないということは、「ジブン・ポートフォリオ」を考える上では極めて重要です。
勘違いしてほしくないのは、「これから円安になるかもしれないからドル資産を買いましょう」と言っているわけではないということです。円安になるからドルを買いましょうなどということは、これまた単なるギャンブルです。大事なことは不確実な未来を予想することではなく、未来は不確実なものなのだと受け容れて、その不確実性に備えることなのです。
ですから、日本が先進国にとどまることができるか、後進国に再び転落するのかにかかわらず、自身の購買力を守るべく「ジブン・ポートフォリオ」を為替面で分散させておくことが肝要です。なぜならほとんどの日本のビジネスパーソンの「自分資産」は、「日本企業で働き、日本円を生涯収入として受け取る」構造なので、必然的に「日本企業の価値増大」「日本円」に偏りがちだからです。
具体的な分散方法としては、
①「自分資産」において、自己投資、自己研鑽を積むことで、海外で働いて先進国通貨(ドル)を取り込むことができるような「自分」になる。
②「金融資産」において、先進国通貨(米ドル、ユーロ)建て資産を一定程度の比率入れるように意識する。
ということを考えましょう。①は時間はかかりますが、最も確実なインパクトをもたらしてくれます。②については、外貨預金でも通貨の分散上は有効ですが、預金などの貨幣ベースの資産が購買力という観点では何も生まないことは先述の通りです。米国等のグローバル企業の株式など、日本円以外の価値を生む資産を組み入れることが効率的な分散効果につながります。
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『ビジネスエリートになるための 投資家の思考法』『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(いずれもダイヤモンド社)など。
投資信託「おおぶね」:https://www.nvic.co.jp/obune-series-lp202208
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