頭をかかえる男性写真はイメージです Photo:PIXTA

雑所得を原則的に収入金額300万円以下とする、「所得税基本通達の制定について」の改正案がにわかに話題になった。8月に国税庁が、この通達改正案に対するパブリックコメントを募集していたこともあり、「ついに、サラリーマンの副業が国税庁に狙われた。このままの改正案なら、金額が300万円を超えない副業は『事業所得』でなく『雑所得』として一律に扱われることになるかもしれない」などの意見が飛び交ったのだ。筆者は2021年4月に『税務署が普通の会社員の副業を狙い撃ち!確定申告書「あの欄」の変化を凝視』といち早く寄稿し、国税の動きに警鐘を鳴らしていた。そこで今回は、国税庁が示した改正案の狙いと、その根っこにある所得税の現状の問題点を少し丁寧に解説したい。(元国税査察官・税理士 上田二郎)

通達改正の目的は
給与所得控除と青色申告特別控除のダブル控除問題

 国税庁の発表した「改正案」に、多くの人が不満や懸念を示している。

 例えば、「経済状況の変化などによって副業を認める企業が増加し、副業を始めたサラリーマンも少なくない。ところが、この機運に水を差す所得税の法令解釈を一部改正する案が提示されている」という旨がとあるネット記事に書かれていた(NEWSポストセブン)。筆者も副業に水を差す可能性がある点については同感だ。

 改正の狙いは、副業があったことにして多額の赤字を計上し、給与所得と損益通算をする詐欺的な行為を“監視”することだとみる人が多いようだ。しかし、これらの不正還付は税務調査で退治できる。

 今回の通達改正の本当の狙いはサラリーマンの給与所得控除と青色申告特別控除のダブル控除問題だ。一体どういうことか。