国家公安委員会の特別機関・警察庁長官官房によると、サイバー犯罪は2013年に5741件だったのが、21年には1万2275件に増加しているという。犯罪に巻き込まれる危険性のあるネット利用はもちろん要注意だが、安易な発信が「税務調査」に至る恐れもある。(税理士、岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)
子どもや高齢者だけじゃない!
有名人も被害を受けたネットトラブル
SNS(Social Networking Service/ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、1995年頃に原型が登場し、2000年代初頭から普及し始めたといわれる。歴史は浅いが、すでに現代生活に欠かせないコミュニケーション・ツールだ。一方で、匿名で発信可能な特性が多くのトラブルも生んでいる。
「サイバー犯罪」とは、コンピューターやネット技術を悪用した犯罪を指すが、SNSもその温床となりつつある。未成年者誘拐、児童ポルノ、ストーカー、振り込め詐欺……。なかには、国際的・組織的な犯罪に利用されたり、殺人や自殺など、生命を危うくされたりという重大事件に発展するケースもある。
しかし、気をつけていても、犯罪被害に遭うことはある。世界3階級を制したプロボクサーの井上尚弥は、試合中に自宅へ空き巣に入られた。プロテニス選手のディエゴ・シュワルツマンとペドロ・マルチネスも、試合中、宿泊先ホテルが空き巣被害に遭った。犯人はSNSで試合日程を確認したらしい。
数年前、地下アイドルがSNSに公開した本人写真の瞳に映る景色から住居が特定され、ストーカー被害に遭った事件も記憶に新しい。有名人だけではない。ブランド品をSNS投稿したばかりに窃盗グループに狙われた、SNSで下見されて車やバイクを盗まれた……といった被害も続出している。
自宅や勤務先の窓からの風景写真、愛車の写真をSNSへアップするなどは、ついやってしまいがちだ。所在やナンバープレートが知られないよう配慮が必要である。旅行中や出張中の発信も、場所や留守時を特定されかねない。なかには、「友達リスト」から連絡先を闇金業者に知られた例もある。
犯罪被害に遭うことは、もちろん避けたい。まして、加害者になるなどもってのほか。さらに注意すべきは、SNSを入念にチェックしているのが、悪意のある人間や犯罪者ばかりとは限らないことだ。
最近では、動画サイトを見ると、財テクや投資術を語るものも多い。なかには、「いくらもうけた」だの、「豪邸や高級車を買った」だの、自慢げに披露する内容もある。窃盗集団などに狙われないよう注意が必要だ。そして、国税局や税務署に対しても、注意を払うことを忘れてはいけない。