2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけらるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つのポイントを挙げてもらった。今回は、当サイト連載「クリティカル・アナリティクス」でおなじみの政治学者、立命館大学政策科学部の上久保誠人准教授意見をうかがった。
立命館大学政策科学部准教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。
①13年度予算編成で、「予算分捕り」を狙う族議員・官僚と規制緩和、財政健全化を狙う政策通の対立が顕在化する。
理由:政権交代を成し遂げた自民党の内部は、規制緩和・財政健全化を志向する政策通と、利益誘導政治の「夢よもう一度」と考える族議員が同床異夢の状態にある。13年度予算編成の攻防で、その対立構図が顕在化する。安倍政権は成長戦略として、200兆円の規模とされる「国土強靭化法」など拡張的な財政政策を打ち出しているが、「予算分捕り」を目指す族議員・官僚の跋扈を抑えられず、旧来型の公共事業のバラマキに堕する危険性がある。安倍首相が予算編成で族議員・官僚を抑え込む政治力を発揮できなければ、その後TPP参加問題、原発問題などの懸案で、族議員・官僚の復古主義の動きを止められなくなる。