熱気溢れる世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)の直前、その盛り上がりに水を差すような調査結果が家電協会から発表された。2012年のデジタル家電の世界売上高が、リーマンショック直後となる09年以来の前年割れになったというのだ。業績不振に喘ぐ日本の家電メーカーにとっても、不安なニュースである。しかし一方で、国内では一筋の光も見え始めた。シャープの高画質新型液晶「IGZO」(イグゾー)を搭載したスマホの売れ行きが、絶好調だというのだ。苦境のなかでもヒット製品を生み出すことができれば、各社は復活への道筋をつけることができる。「IGZO搭載スマホ」がヒットしている背景をリサーチし、今ユーザーが本当に求めている技術・製品の条件を探ってみたい。第二、第三の“ミラクル家電” は出るか。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)
4Kテレビのフィーバーに水を差す
「世界家電市場前年割れ」の一報
今月8日、米国はラスベガスで世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)が開催された。毎年、家電業界の関係者やファンの間で話題になる催しだ。
今年の目玉は「4Kテレビ」。家電などのマーケティング調査を行なっているBCNによると、これは表示パネルの解像度がフルHDの4倍もあるテレビのことで、あたかもそこに実体があるかのようなリアルで高精細な映像を楽しめるという。
デジタル家電ファンにとって、4Kはテレビで起きる久しぶりの革新である。今春から国内、海外メーカーから続々と発売される予定で、待ちわびている人もいるだろう。
しかしこのCESの直前となる1月6日、関係者の盛り上がりに水を差すような調査結果が発表された。米家電協会(CEA)によると、2012年のデジタル家電の世界売上高が、リーマンショック直後の09年以来の前年割れとなり、対前年比1%減の1兆580億ドル(約93兆1040億円)になった模様だと伝えたのだ。
大赤字に苦しみ、大規模なリストラを推し進めるソニー、パナソニック、シャープなど、日の丸家電メーカーの惨状を見るにつけ、長引く不況による需要減とそれに伴う低価格競争は、深刻の極みにある。
2013年は前年比4%増の1兆1050億ドルと、緩やかな回復を見込んでいるというが、従来花形といわれた白物家電の不調が続くなか、その穴を埋めるデジタル家電に期待をかけていた業界関係者は、肩を落としたことだろう。