「洋服が電源」も夢じゃない?発電繊維が秘めた大きな可能性とは写真はイメージです Photo:PIXTA

着用者が動くと繊維から微弱な電圧が発生
衣服の抗菌を実現

 2年ほど前の2020年6月、ある次世代繊維の誕生が発表され、アパレル業界の耳目を集めた。衣服などに使い、それを身に着けた人が動くことによって電気エネルギーを発生する圧電繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」だ。

 村田製作所と帝人フロンティアがそれぞれの技術を融合して開発したもので、同時に、ジョイントベンチャーとしてピエクレックス(滋賀県野洲市)も設立し、研究開発や製品化に本格的に乗り出した。

 発表の際、示された性能は、発生した電気によってアパレルなどの生地を“抗菌する”というものだ。

 仕組みはこうだ。PIECLEXは、植物から抽出したデンプンを発酵させて乳酸を作り、結合させた「ポリ乳酸」と呼ばれる高分子ポリマーを原料として作られた圧電繊維である。

 圧電繊維とは、ねじれたり、引っ張られたりして繊維に圧力がかかると電気エネルギーを発生させる特性を持つもの。この電気エネルギーによって、繊維間に電界が生じ、その電界によって細菌の増殖を抑制するというわけだ。

「洋服が電源」も夢じゃない?発電繊維が秘めた大きな可能性とは左から、PIECLEXで作った繊維、糸、糸の断面のイメージ図。人が動くことによって、繊維間に電界が発生し(糸の断面図の黄色部分)、細菌(緑色部分)の増殖を抑制する 写真・図提供/ピエクレックス 拡大画像表示

 電気エネルギーは数ボルトから数十ボルト程度で、人間が感知しないレベル。3000ボルトほどと言われる静電気に比べると微々たるものだ。だが、それでも細菌の増殖を抑制するには十分な電圧であり、これによって抗菌作用を発揮する。