6000軒を片づけた家政婦が見た、他人の「インスタ映え収納」の真似がダメな理由写真はイメージです Photo:PIXTA

「片づけカースト」で不必要に
コンプレックスが刺激されている

「仕事ができる人はデスクがきれい」説が持ち上がるたび、「そうではない例もある」と反論が出るのをこれまでに何度も耳目にしてきました。確かに、私が会社員時代の上司もそうだったので、よくわかります。仕事には定評のある方でしたがデスクはいつも散らかっていて、モニターの横にはお土産で配られた古いお菓子がいくつもほこりを被り、足元は正体不明の箱で埋まっていて窮屈そうでした。

 職場だと「片づけは、できないよりできたほうがいいけれど、まあ仕事が回っているなら何でもいいんじゃないの」と許されるのに、これが家庭となるとガラリと空気感が変わってしまう。私が片づけサポートで一般家庭を訪問した際に感じる、「今のままじゃダメだ」「もっとちゃんとしなくちゃ」といったプレッシャーがそれです。

 私は、『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。』という本で、「片づかないのはあなたのせいではなく仕組みのせい」「めんどくさいに気づくアンテナを磨くことが大事」と解説しています。要は、「自分を主役」に、片づけの仕組みを作り直そうと提案しているのです。ところが、「私にそんな資格はない…」と感じている人が意外なほど多く、なかなかピンときてもらえないのが大問題です。

 なぜ、多くの人がこんなにも、「不必要な自己不全感」を抱えているのでしょうか?

 それは、SNSで発信されるステキなライフスタイルの数々が、人々に「片づけカースト」を意識させるからだと私は考えています。

 写真のインパクトは絶大です。試しにInstagramで「#収納術」と検索してみてください。

 モノが少なく、上質なインテリアに囲まれ、生活感が抑えられている――そんな家庭の様子やステキな収納写真が無数に現れます。こういうものを目にしてしまうと、「あるべき片づけのレベル感」を誤解して、コンプレックスを募らせる人が増えるのもやむを得ないのかもしれません。

 6000軒を片づけた私が断言します。片づけや、空間づくりのセンスに人と差を感じても、自己否定する必要は全くありません!

 片づけのゴールは、「誰かに“いいね”と言われる住まい」でも「よその人に見せても恥ずかしくない暮らし」でもなく、「私は私なりに生活と住まいをコントロールしている」という自己効力感だからです。

 片づけカーストの上位層をそのまままねしたって、うまくいくものではありません。「わが家はこれでOK」の答えをつかむために、ヒントを得るくらいでちょうどいいのです。

 そこで今回は、片づけカーストの正体をつかみ、片づけに悩む人がコンプレックスを乗り越える方法を解説します。