「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が教える】おとといの晩ごはん、何を食べたか思い出せない…じつは1日1リットル近い水分を失っている!脳を危険にさらす「水分補給の大誤解」Photo: Adobe Stock

寒い時期でも「隠れ脱水」に気をつけましょう

【前回】からの続き 運動して汗をかいていなくても、私たちは皮膚や呼気などからつねに水分を失っています。これを「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」といいますが、その量は「1日900ml」にも達します。何もしなくてもこれほどの水分を失っているのですから、定期的に水分補給をしないと、脱水を起こして血液がドロドロになり、血液循環を妨げる一因となります。

空調がきいて乾燥している室内に長くとどまっていると、さらに不感蒸泄は起こりやすい傾向があります。のどが渇いたと気づいたときには、すでに脱水は始まっています。ですから、座りっ放しを避けて立ち上がったら、のどが渇いていなくても、ついでにコップ1杯程度の水分をとるようにするといいでしょう。

私たちの体重の60%前後は水分です。体重の3%以上の水分が失われている状態を「脱水症」、その一歩手前で体重の1~2%の水分が失われている状態を「隠れ脱水」といいます。高温多湿で汗をかきやすい夏場だけではなく、空気が乾燥する冬場でも脱水症や隠れ脱水を起こしやすいので気をつけなくてはいけません。

「のどが渇いた」と感じる前に
定期的に水分補給をしましょう

高齢になると、脱水を起こしてしばらくたっているのに、のどの渇きを覚えないことがあります。のどの渇きを感知するのは、脳の奥にある「口渇(こうかつ)中枢」という場所なのですが、加齢により口渇中枢の働きが落ちやすくなるため、のどの乾きを感じにくいのです。

食欲が落ちて、食事量が減るのも、高齢者が脱水を起こしやすい一因です。私たちは1日に2.5リットルほどの水分をとっていますが、そのうち1.0リットル前後は食事からとっているのです。汁物はもちろん、野菜や果物の80~90%は水分ですし、ごはんやうどんなども60~70%は水分です。食事量が減ると、体内に入る水分量も減りがちなのです。また、高齢者は頻尿になりやすく、夜中にトイレに起きたくないという理由で意図的に水分の摂取を控えることがあります。これも脱水の誘因となります。脳の血流を活発にするためにも、意識的に水分補給をしたほうがいいです。

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。