ただ話すだけなのに「頑張る」「疲れる」「気を使う」……。日々のコミュニケーションで苦戦苦闘している日々よ、さようなら。これからは、説得しようと力業で勝負する必要はありません。自ら動くのではなく、相手に動いてもらい、自分の思い通りの結果に導けばいいのです。
それを可能にしたのが、大久保雅士著『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』だ。「トップセールス」の実績を持つ「メンタリズム日本一」が生んだ至極のコミュニケーションスキルが詰まった一冊。本書より、徹底的に磨かれたノウハウを一部抜粋し、「口下手で人付き合いが苦手」な人でも今日からすぐできる方法を紹介する。

去り際の古畑任三郎から学ぶ「気の利いたひと言」Photo: Adobe Stock

いい会話は、話の去り際で決まる

 ドラマ「古畑任三郎」は、コミュニケーションがよくなる宝庫です。犯人との会話でよく使われるセリフがこちらです。

「そうですか~。なんか引っかかりますね~。また、今度来ます」

 去り際にこんなことを言われた犯人はたまったものではありません。気になってしまい、「なにが引っかかるのですか?」と自分から聞いちゃうのです。

 最初は主人公の古畑を応援していても、だんだん追い詰められていく犯人に感情移入し、「聞かなきゃいいのに......」なんて思いながら見た人も多いのではないでしょうか。

 去り際に言われた言葉はとても印象に残ります。

 これは「親近効果」と言い、アメリカの心理学者ノーマン・H・アンダーソンが行なった実験結果を基に提唱されました。実験では模擬裁判を行ない、証言の提示される順で陪審員の判断がどう変わるのかを観察。さまざまなパターンで実験したようですが、どのパターンで裁判を行なっても、最後に証言した側が陪審員を説得することができたというものです。

 ここから、「最後の印象が残りやすい」という心理現象に繋がるわけです。人の記憶は去り際で思い出を書き換えることができるといわれています。

 では、どのような終わり方が相手の印象に残るのでしょうか。

 まず一つは、会話を振り返る言葉です。

 相手との会話の中で自分が印象に残った話題を最後に伝えると、相手の承認欲求をくすぐることができます。印象に残った話題を具体的に伝えれば伝えるほど相手に大きなインパクトを与えられます。

「今日教えていただいたカフェのふわふわパンケーキ、絶対食べに行きますね」
「先ほどの格言、めちゃくちゃ心に響いたので、今度私も使わせていただきます」
「紹介してもらった本の続きが気になるので、この後、書店に寄って買ってきます」

 具体的に伝えると、相手は「話をちゃんと聞いてもらえていた」と実感し、うれしくなります。当然、あなたへの好印象に繋がっていくのです。

 そして、もう一つ。相手にとってポジティブな話をチョイ出しして終わることです。

 内容はポジティブな話ですが、やり方は冒頭の古畑任三郎と同じ手法です。「それでは、また」と相手に別れを告げた後にこう付け加えるのです。

「そういえば、○○さんに会いたいと言っていた人がいたので、今度紹介しますね」
「そうだ! ゴルフに行ける日程が決まったので、後でお伝えしますね」
「欲しがっていたコンサートのチケットを手に入れたので、後で連絡しますね」

 こう言うと、相手はあなたの言葉が気になり、ポジティブなままあなたの印象が記憶に定着します。

「今、教えてください」と言われても、「いえいえ、また後で」とぶったぎって終わりましょう。

 私もよく使いますが、不思議なことに、これで悪印象を持つ人はほとんどいません。相手にとってポジティブな話がある場合はその場で出さず、去り際のひと言に取っておきましょう。

(本原稿は、日々のコミュニケーションがラクになる36のノウハウが詰まった書籍『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』から一部抜粋、編集したものです)