【マラン(インドネシア)】インドネシア中部・東ジャワ州マランで今月初め、サッカープロリーグの試合を観戦していたフトリアディ・ヘルマントさんと友人のファリス・ブラマントさんは、試合終了後にスタンドで催涙ガスを浴び、激しい衝撃を受けた。ヒリヒリと痛く、かゆみを伴う感覚があったほか、ファリスさんは息ができない気がしたと言う。
大勢の群衆がすでに出口に通じる階段に殺到していた。互いに突いたり押しのけたりし、倒れ込む人が続出した。中には他人を飛び越えて前に出る者や、腕や足や胸を踏みつけて自分だけ生還しようとする者もいた。
「誰もが身勝手だった」とファリスさんは言う。「他に選択肢はなかった。それ以外に脱出する道はなかった」
群衆が慌てて逃げようとしたことが、10月1日に131人の死者を出すサッカー史上まれにみる大惨事を生んだ。当日の警察の行動を目撃し、それに続く大混乱に巻き込まれた観客の詳細な証言によると、その夜に起きたあらゆる不運な出来事のうち、悲劇の引き金になったのはインドネシア治安部隊による観客席への催涙ガス発射だったという。