ビジネスパーソンが「資産運用」を始めるとき、ベストのタイミングはあるのでしょうか? 資産運用のロボアドバイザーサービスを展開するウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久さんの著書『これからの投資の思考法』より柴山さんの見解を紹介していきます。

相場が上がっていくときになぜか買いたくなり、相場が下がっていくときになぜか売りたくなる。合理的とはいえないこの行動ですが、相場の先行きが見えないから怖さが先立つのでしょうか。仮に相場がどう動くかがわかっていたとすれば、「正しい行動」ができるのでしょうか。

ある条件のもとで、2人の個人投資家のどちらが高いリターンを得られるかを考えてみましょう。

相場が上がるとき?下がるとき?資産運用はいつ始めればよいのか?資産運用はいつ始めるべきか
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上図のように1月に1万円だった株価が下がり続けて4月に6500円となり、その後は上がり続けて12月に1万1000円になったとします。

Aさんは「相場は気にせずコツコツと投資しよう」と思い、1月から12月まで毎月10万円ずつ積み立てます。Bさんは「1月の株価は高すぎるから、しばらく様子を見て株価が下がったところでスタートしよう」と思い、4月に株価が底を打ったのを確認して5月から12月まで毎月15万円ずつ積み立てます。投資にあてたお金の合計(元本)は、2人とも120万円です。

さて12月時点で、AさんとBさん、どちらの資産が増えていたでしょうか?

多くの人は、「Bさんだ」と回答します。資産運用は、相場が下がりきってから始めるべきではないか、というわけです。

しかし、実際に計算してみると、資産が増えていたのは、相場が下がる前から投資していたAさんでした。12月時点で、Aさんの資産は154万円、Bさんの資産は149万円となりました。相場が下がる局面でも積立投資をし続けたAさんのほうが、安く投資できていた分、リターンも高くなったのです。

大切なのは、この問題に正解することではありません。設定を少し変えるだけで、正解が変わることもあります。

ポイントは、多くの人が「Bさんの資産のほうが増えそうだ」と直感してしまうことにあります。平均の購入価格を比べるだけなので、実は計算すればすぐに答えはわかります。エクセルが得意であれば10分ほどで正解にたどり着けるでしょう。

しかし実際には、計算を一切せずにBさんを選ぶ人が大半です。直感があまりに強く、冷静に計算して行動しようという思考を妨げるのです。