日本電産の永守重信会長は、「経営者は自分自身の器を大きくしていかなければなりません。私もこれまで器の大きい人からたくさんのことを学んできました」と告白する。あるとき、オムロン創業者の立石一真さんのところに出向くと、衝撃の光景に出くわし、自分の器を省みる機会になったという。
*本稿は、永守重信『人生をひらく』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。
リーダーが強いほうの組織が勝つ
会社というのは、トップが一人代わるだけで、大きく変わるものです。これまで計画目標の未達ばかりを繰り返していた組織が、トップが代わっただけで目標達成できるようになることはよくある話で、それだけ誰がトップとなるかは重要だということです。
小さな子供に「大将がオオカミで、49匹の隊員はすべて羊のチーム」と「大将が羊で、あとの49匹はオオカミのチーム」が戦ったときにどちらが勝つか聞いたら、きっと「オオカミが49匹いるチームが勝つに決まっている」と答えるのではないでしょうか。
しかし、私は違うと思う。私の経験からいえば、リーダーが強いほうが勝つ。だから、自分の部下にはろくな人材がいないとか、アホばかりと言っているリーダーがいたら、それは自分に指揮能力がないことを認めているようなものだと私は思います。リーダーがオオカミになって、49匹の羊をしっかりと指揮すればいいだけの話なのです。
日本電産の初期の頃がまさにそうで、将棋でいえば、「金」もなければ、「銀」もない。
「桂馬」もない中、「歩」だけで前進していきました。しかし、「歩」は、一歩ずつしか進めません。「飛車」や「角」のように大きく前進することはできない。それを「王将」である私が、後ろからぐいぐい押していったのです。それでも、敵陣まで進めば、「歩」は「金」になります。そうやって考えれば、まずはリーダーが強ければ勝てるということです。
かくいう私も以前は、最初から「金」とか「銀」の人材を集めたほうがいいと考えて、2000年代頃に、世界的に有名な大学を卒業した人材をたくさん採用したことがあります。