カリスマ経営者として知られる日本電産の永守重信会長兼CEOは、「人間は基本的に失敗するようになっています。それを防ぐには、異常と思えるくらいのことをやるべきだということです」と説きます。どういうことか、永守会長自身の失敗談を交えながら語ります。
*本稿は、永守重信『人生をひらく』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。
部下にいかに失敗を経験させるか
仕事においても、人生においても、成功体験を積んでいくことで、夢に一歩ずつ近づいていくことになります。
しかし、何も失敗せずに成功するというのはあり得ませんし、あまりおすすめできません。失敗して失敗して、「おまえ、いつも失敗しているな」と言われるくらいまでいったほうがかえっていいのです。成功体験の裏返しは「失敗」なのです。
普通の上司であれば、「部下を失敗させたくない」と考えるかもしれませんが、部下を成功させてばかりの上司もダメだけれど、失敗させない上司もダメだと私は考えています。
ですから、部下に対して成功させてやろう、成功させてやろうと思い過ぎないほうがいい。かえって逆効果になるからです。そうではなく、何でもいいからどんどんやらせて、がんがん失敗させる。部下は失敗したくないと思っているものですが、がんがん失敗させるわけです。
たとえば、50しか能力のない人に80の仕事をさせると、たいていは失敗するでしょう。ところが、その失敗を教訓にして、60の仕事ができるようになります。能力が60になったら、次は90の仕事をやらせて、また失敗する。またまた教訓にして70の仕事ができるようになる――。人というのはそうやって前に進んでいくものです。
それから、上司というのは、自分の過去の失敗談を部下にたくさん話したほうがいい。「私はこんな失敗をしたことないぞ」といい格好をしてはいけませんし、「おまえはバカか」とか、「こんな単純な失敗するやつなんてダメだ」とか言ってもいけません。
私だって、たくさんの失敗をしてきました。