日本電産・永守会長が、経営者には無理難題にも従う「子分」が必要と説く理由Photo:PIXTA

日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は、「事実として、経営者には子分が必要」と説く。親分からの無理難題であっても、「わかりました」と親分を信じて実行する部下のことだ。永守会長の独特な経営者論とは? *本稿は、永守重信『人生をひらく』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。

子分を持つことの大切さ

 部下も育てられない人が多いのに、部下を育てた上で、さらに子分を育てろというのは酷な話かもしれませんが、事実として、経営者には子分が必要です。

 子分というのは、親分の言うことには絶対的な信頼を持っているものです。親分からの無理難題であっても、「わかりました」と親分を信じて実行する。そういう部下がここで言う「子分」になります。

 人間は後ろに目がついていません。前は自分で見えるから、自分の力があればどんな敵が来ても戦える。しかし、だいたいは後ろからやられるものです。部下10人のうち、子分と言える人が2人はいないと裏切り行為に遭ってやられてしまう。それを防ぐためにも、部下の20パーセントを子分にして、後ろを見ておいてもらうべきだと私は考えています。

 ただ、子分の育成はそう簡単ではありません。入社して2年や3年の部下では難しい。10年でも難しいかもしれませんが、最低10年はかかると考えておきましょう。

 私の場合は、小部博志副会長など、ツーカーの子分がたくさんいます。彼らとの信頼関係は相当なもので、お互いに疑うことがありません。お互い相手の言うことをまずは鵜吞みにした上で、議論をします。だから、何を言っても、何をやっても基本的にはオーケーの関係を築いているわけです。

 たとえば、私が「バカヤロウ」と言ったとしたら、新しく入ってきた若い人たちならすぐに辞めてしまうかもしれません。でも、子分の場合は、「バカヤロウ」と言われたあとに…。