マネックスの悲願「コインチェックSPAC上場」が窮地、業績悪化&情報漏洩が多発Photo:PIXTA

マネックスグループ(社長CEO・松本大、以下マネックス)の、米国の特別買収目的会社(SPAC)を通じた子会社上場計画が難局に立たされている。マネックスは今年、米ネット証券子会社トレードステーションと国内暗号資産大手・コインチェック(社長・蓮尾聡)のSPAC上場を目指していたが、8月にトレードステーションの上場を断念。背水の陣となるコインチェックだが、上場目前にもかかわらず業績が悪化し、情報漏えいなどの不祥事が多発。社内体制の脆弱(ぜいじゃく)さを露呈しつつある。(フリーライター 村上 力)

暗号資産取引所のコインチェック
最新決算で大幅減収の見込み

 コインチェックがSPAC上場を目前に赤字体質に陥っている。

 取材によれば、10月末公表予定の今期第2四半期(22年7~9月)、コインチェックの営業収益は前年同期比80%減の約15億円と、第1四半期の75%減を上回る大幅な落ち込みとなることが分かった。第2四半期累計(4~9月)ではわずかに黒字を維持しているものの、月次損益は6月以降、4カ月連続の赤字だ。

 コインチェックの業績悪化は、親会社のマネックスにとって一大事である。マネックスの22年3月期の連結税引き前利益208億円のうち、約66%に相当する138億円は、コインチェックのクリプトアセット事業セグメントが稼ぎ出したものだ。

 マネックスの企業価値の大半はコインチェックが占めている。マネックスは22年3月期第3四半期、決算説明会資料の中で、自社の企業価値を6300億円とする試算を公表している。そのうち、コインチェックの企業価値は半分を超す3400億円としていた。

 また、今年3月にコインチェックのSPAC上場計画を公表した際も、合併相手のSPACとの間で合計2100億円の企業価値評価を得たとしている。

 3月時点のマネックスの時価総額は約1700億円だ。子会社の企業価値が親会社のそれよりも大きいコングロマリット・ディスカウントの状況に陥っていた。

 マネックスの株式を5%超保有する香港系ヘッジファンド、オアシス・マネジメントは、今年2月に提出した大量保有報告書の保有目的に「重要提案行為を行う」と記している。おそらく、コインチェックの企業価値より低いマネックスの時価総額の改善を求めるとみられていた。