「人は見た目が9割」や「第一印象は6秒で決まる」などと言われるように、その人の印象は外見を見て判断されることが多いです。「何となくだらしない」「なんか嫌な感じ」など、相手の服装や表情がそのままその人の印象に残ることもあります。ただ、外見以外にも印象を左右する重要なポイントがあります。今回は、エグゼクティブな印象力についてです。(CCI代表取締役・元国際線チーフパーサー 山本洋子)
見た目は大事だが、それだけで好印象にはならない
人の印象を左右する法則として有名なのが、「メラビアンの法則」です。
この法則によれば、コミュニケーションにおいて、重要なのは三つの要素です。話す内容などの言語情報(Verbal)が7%、声のトーンや言葉づかい・話すスピードなど聴覚(Vocal)からの情報が38%、表情や身だしなみ・立ち居振る舞いなどの視覚からの情報(Visual)が55%の影響力を持つといいます。
なので、人と接するときには表情や身だしなみなど外見をまず整えましょうと一般的に解釈されています。これも一理あるのですが、実はこの法則が本来意味するところは、矛盾した情報が与えられたときに、人は何を優先して判断するかということを表しています。
たとえば、「うれしい。ありがとう」と言葉で相手に伝えるとき、その時の表情が笑顔もなく険しい表情であったら、人は言葉の内容よりも見た目の険しい表情を優先的に読み取り、「この人は本当はうれしくないんだな」と判断するというものです。言葉と表情を一致させないと気持ちは相手に伝わらないということを意味しています。
目から入ってくる情報は何よりも優先されるという人間の脳の仕組みなのですが、耳から入ってくる情報も人の印象を左右する大きな要因の一つになります。つまり言葉と表情だけでなく、声のトーンや話すスピードなども見た目と言葉に一致させないと相手に好印象を与えることができないのです。
たとえば、「声」。声高にまくしたてるように話す人は、人に威圧感を与えます。また低いドスの利いた声で責めるように話す人は、人に恐怖感を与えます。その人が持つ本来の声質は変えられないものですが、声のトーンや話すスピードは意識次第で変えることができます。
多くのエグゼクティブは外見同様、声をうまく使い分けて印象を操作しています。声の重要性に気付かされたのは、ある人気芸人さんのギャップに驚いた経験からでした。