「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(取材・構成:田中裕子、撮影:Wang Kai-Yun)
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非ネイティブの勉強に「ひとりごと」はかなり有効
──なかなか英語力が上がりません。台湾人として非ネイティブでありながら、NPOのインターナショナルチームのリーダーを務めているチャンさんは、どのような勉強をして英語をマスターしたのでしょうか?
ジル・チャン:時間のない大人が英語を勉強するうえで大切なのは、適切なゴールを設け、それに向けた戦略を立てることです。つまり、まず「自分はなぜ英語を勉強しているのか」を明確にするところから始めましょう。
たとえばビジネスメールを書けるようになりたいのか、ミーティングで議論できるようになりたいのか、外国の友達と楽しくビールを飲みたいのか。具体的に目標設定することで、勉強内容の優先順位をつけられるはずです。
私は現在、インターナショナルチームのリーダーを務めていますが、いまだに英語は勉強の途中です。英語力向上のため、私が日々取り組んでいる勉強法を共有したいと思います。
まず、ネイティブスピーカーの言うことをじっくり聴き、メモし、マネする方法です。私はいまも英語でのミーティング中、はじめて聞いた言葉や、「素敵だな」と感じた言い回しをノートにメモしています。そしてその言葉を、バスに乗りながら、歩きながら、家の中で、何度も一人でリピートして自分に定着させるのです。
この方法なら、ネイティブスピーカーに話しかける勇気のない内向型人間でも、英語表現のバリエーションを増やすことができます。
「好き」で英語に触れる時間を増やす
また、一人でできる勉強法として、その場でシナリオを考え、その設定で英語を話してみる方法もあります。
私はしょっちゅう、「もしノーベル賞を受賞したらどんなスピーチをしよう?」「いまあのビルまでの道を聞かれたら、どう答えよう?」と考え、頭の中で言い回しを練りながら歩いています。うまく英語で答えられなかったミーティングを思い出し、どう言えばよかったのか考え続けることもしばしば。こうして、英語に触れる時間を増やしていくのです。
英語学習をしている方の中には、ネイティブスピーカーに接する機会がなかなか持てない方も多いかもしれません。そういうときは、自分の「好き」を軸に、英語に触れる環境を作ってみるといいでしょう。
たとえば好きな歌手のインタビューを英語で聞いたり、映画やYouTube、興味のある分野のドキュメンタリーを英語で見たり、英語のポッドキャストを聞いたり。「好き」をベースにすることで、継続の助けになるはずです。
「英会話がうまい人」に共通していたこと
ちなみに、台湾も日本のように読み書きを重んじる教育なので、私も以前は話しながら「これは現在形? 過去形?」「単数系? 複数形?」などと考えがちで、言葉がなかなか出てきませんでした。
しかし、『「静かな人」の戦略書』にも書いたのですが、ハーバード大学のリーダーシッププログラムに参加した際、さまざまな発見がありました。
そのプログラムには多くの非ネイティブの学生が参加していたのですが、最初、猛スピードで自信満々に英語をまくしたてる、ある学生に圧倒されたんです。でもよくよく聞いてみると、ネイティブにはその内容が全然通じていませんでした。
一方で、「英語がうまいな」という人の話を聞いていると、共通して、シンプルな文章で、とてもわかりやすく、落ち着いて喋っていました。
英語はあくまでもコミュニケーションの手段です。いくら見事な語彙を使っても、自信満々で立て板に水のようにまくしたてても、伝わらなければ意味がありません。
そこで私は、伝える努力にフォーカスするようになりました。ボディランゲージを使ったり、ゆっくり話したり、クリアに話したり、シンプルな単語を組み合わせたりして、自分の言いたいことができるだけ伝わるように話をする。
わかりやすいシンプルな言葉で話す習慣こそが、非ネイティブの英会話において、最も大事なことだと気づいたんです。
>>次回「『メンタルの切替えが早い人』がしている1つの習慣」に続く