「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(取材・構成:田中裕子 初出:2022年12月9日)
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ためらわずに「やめる」
──気分がどうしても上がらず、何もやる気がしないときがあります。内向型の人はとくに、目の前の問題について考えすぎたり、ちょっとしたことが気になったりしてメンタルが落ちてしまうことがよくあると思います。そんなときは、どうすればいいですか?
ジル・チャン:メンタルが落ちているときは、何をしても手につきません。仕事などをしたところで効率は悪いです。ですから、そんなときはそのままだらだらと続けないこと。いまはダメだと割り切って、「充電モード」に切り替えてください。
とくに内向型にとって充電は絶対に欠かせない時間です。自分でも気づかないうちにエネルギーが枯渇しているときもあるので、定期的に「充電の時間」を取るようにしてください。
猫と遊ぶ、瞑想する、旅行の計画を立てる……いろいろなアプローチがありますが、自分は何をすればエネルギーを充電できるのか、元気なときにあらかじめ確認しておくといいでしょう。
万人におすすめの充電法は、運動やエクササイズです。
筋肉を使ったり呼吸にフォーカスしたりすることで気が紛れますし、エンドルフィンという脳内物質が出ることによって幸福感が得られ、エネルギーが湧いてくるはずです。
私自身、落ち込んだときはスパッと手を止めます。そして、もっぱら日本のエンターテインメントに頼っています。『ドラゴンボール』や『幽遊白書』、『キャプテン翼』などを読むと、困難なときでもあきらめない主人公の姿に勇気づけられます。
最近は映画『岳』や『風が強く吹いている』を観ましたが、肉体的にも精神的にも極限状態に追い込まれるようなストーリーに触れると、自分の苦労なんて大したことないと思えるのです。90年代のJ-POPには日々エネルギーをもらっていますし、日本のカルチャーには感謝しきれません。
「憧れに近づく方法」を考える
また、仕事に対してやる気を失ったときは、「崇拝する人と仕事をしている自分」を想像するのもおすすめです。相手は、野球選手でもアイドルでも著名な起業家でも構いません。
たとえば私の友人の編集者はあるバンドのヴォーカルの熱烈なファンでしたが、仕事に一生懸命打ち込むうちに縁ができ、一緒に本をつくることになったそうです。
このケースは極端かもしれませんが、自分の憧れる人と一緒に仕事をすることを妄想し、それを実現するためにはいま何ができるだろうかと考えてみると、やる気が湧いてきませんか?
『「静かな人」の戦略書』では、内向型であっても、外向型であっても、安全地帯(コンフォートゾーン)から一歩踏み出すことが大切だと書きました。また、「できたのにしなかったこと」を後悔したくないと考えると、やらなければいけないことに自然と目が向くと思います。
尊敬しているスターと自分の間に、どんなつながりがあるか。それをつなげていくために、いまどんなことができるのか。戦略的に考えてみることで、エネルギーが湧いてくるかと思います。