地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)から「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する。
老いた惑星
地球は、さらにゆっくりと、痛みがあるかのように動きつづけるだろう。
まるで、惑星が年を取って関節炎を患っているかのように。
地殻変動プレートは、かつてのようになめらかではない。
地球が誕生したばかりのころ、大陸移動の原動力となった大きな対流熱機関は、核燃料によって支えられていた。
超新星の最後の数秒間でつくられたウランやトリウムのような元素が、ゆっくりと放射性崩壊し、はるかむかしに惑星が形成されたとき、その中心へと逃げ込んだのだ。
史上最大の超大陸
そのような元素はほとんどなくなってしまった。
約八億年後の未来に収束する超大陸は、地球史上最大のものとなる。
それはまた、最後のものでもある。大陸の移動は生命の燃料であり、しばしばその宿敵でもあったが、ついに停止するときがやってきた。
地表にも地下にも生命は…
地表に生命はいない。地下深くでも生命は息を引き取りつつある。
海中の最後の生命は、熱水噴出孔の周辺に集まり、餓死してゆく。
水素と硫黄のミネラル豊富な「スモーカー」も徐々に活動を停止してゆくからだ(訳注:熱水噴出孔のうち、硫黄を多く含み白い煙に見えるものをホワイトスモーカー、鉄、銅、鉛などの硫化物を含み黒い煙に見えるものをブラックスモーカーと呼ぶ)。
一〇億年ほどかけて、地球上の生命は、その存在に対するあらゆる挑戦を巧みにチャンスに変えてきたが、ついにその役割を終えることになる。
(本原稿は、ヘンリー・ジー著『超圧縮 地球生物全史』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)