ラオガンマが、今熱い!

 日本では、ラー油が比較的に認知されているが、中国では、唐辛子を主原料とした辛みそである「辣醤」が日常生活のなかでよく使われている。そら豆を使用する豆板醤と違い、辣醤はそら豆を使用しないのが一般的で、豆板醤に比べて辛みが強烈だ。また、具がたくさん入っているのがその特徴だ。千切り豚肉を長時間かけて炒めて、硬めの歯ごたえと花椒(ホアジャオ)のしびれを楽しむ「干扁肉絲油辣椒」(千切り豚肉ラー油)などは、その代表的な商品だ。

 1996年8月、学校教育を受けたことのない女性・陶華碧さんによって創立されたラオガンマは当初従業員40人の小さな町工場だった。いまや、巨大な生産加工工場を3つ持って、5000人の従業員を抱える食品製造会社に発展した。2018年の瓶詰の年間販売本数は6億本で、世界30以上の国・地域で販売されている。

 中商産業研究院の調査データによると、ラオガンマはすでに中国の辣醤市場の20.5%を占めている。残りの8割の市場を占める辣醤メーカーは複数あり、そのシェアは、それぞれ10%に満たないという。ラオガンマは間違いなく業界の担い手としての地位を保っており、貴州省を代表する民営の瓶詰商品を生産・販売する企業としてもまったく遜色ない存在だ。

 2014年に創業者の陶氏は日本の会長に当たる董事長にとどまるが、会社の経営は、2人の息子である李貴山氏、李妙行氏に任せた。しかし、後継者問題が出てきて暗雲の兆しが見える。

「2022貴州民営企業トップ100」で、ラオガンマは売上高約42億元(約847億円)で第11位だったが、一年前のデータ(2021年)を見ると、ラオガンマは約54億元(約1089億円)の売上高で6位だった。つまり、ラオガンマの売上高は1年間で約12億元(約242億円)も減少したのだ。

 辣醤分野では、ラオガンマは独特の味と長年蓄積された口コミにより、一時「1日100万本」の売り上げも実現した。たった1本の辣醤で中国企業トップ500入りを果たしたといえる。企業経営においても、「借金なし、資本参加なし、融資なし、上場なし」をモットーに、地に足の着いた食品製造業のイメージを確立している。堅実な製品、素朴なスタイルに薄利多売の価格戦略が功を奏し、消費者に評価され、ここまで成長してきたとみていい。

 アパホテルの女性社長の顔が企業のロゴに使われたのと同様に、ラオガンマの瓶にも陶氏の顔が描かれている。しかし、そんな神話のような企業の売上高が落ち込んでしまったのだ。