「私はなぜこんなに生きづらいんだろう」「なぜあの人はあんなことを言うのだろう」。自分と他人の心について知りたいと思うことはないだろうか。そんな人におすすめなのが、『こころの葛藤はすべて私の味方だ。だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。あたかも実際に精神分析を受けているかのように、自分の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・再構成して紹介する。

【精神科医が教える】しつこい怒りをスーッとしずめる効果的な方法とは?Photo: Adobe Stock

息を吐き出し、深く息を吸う

自分が怒りを感じているのかどうかは、心と体を見ればわかります。
顔が赤くほてり始めた、心臓の拍動が速くなってきた、急に早口になった、歩くスピードが速くなった、突然引き出しをかき回して整理整頓を始めた――こんなときは腹が立っているのです。
そうなった理由はすぐにはわかりません。
怒りを鎮めることが先決です。そのためには、深く息を吸ってください。
なんでもないことのようですが、とても大きな効果があります。

深く息を吸うには、まず息を吐き出さなければなりません。

息苦しいときに空気を吸い込もうとするのは大変です。
息を吐き出せば、新鮮な空気が入る空間が生じます。
吸い込むときは3拍、息を吐き出すときは5拍を目安に長さを調整しましょう。
このとき手足が重くなったり、温かくなったりする感覚を想像してください。

そして、自分の中の怒りが「トラ」だとしたら、飛び出したトラをなだめて、再び受け入れる想像をします。
そのあと、トラがあなたの中で自分を表現できるように、「手を貸すよ」と伝えてください。
これが怒りを安全に引き入れる方法です。
怒りとは、心の中で自分がつくり出した子どもなのです。

怒りをぶつける前にすべきこと

腹が立ったときは、本当に怒る必要と価値があるのかを考えてみてください。
怒る必要があるのなら、いつもとはちがう方法がないかどうか探してみます。それから、相手の立場になって考える努力をしましょう。

怒りを感じているときに、相手の立場に立つのはとても難しいことですが、練習を重ねることによって、身につけることができます。

相手に共感しようと努めて、怒りがどこからやってくるのか考えてみましょう。

相手が間違っていると決めつけないでください。
じっくり考えると、どの言葉や行動が、自分の中の何を刺激したせいで腹が立ったのかがわかります。

自分の中のそれがなんなのか、怒るほど価値があるものなのかを考えてみてください。
そのうえで、自分を怒らせた人と話してみましょう。

慎重に言葉を選びます。
はじめから「腹が立つ」「ムカつく」といういい方をすれば、負担を感じさせてしまいます。

まずは「モヤモヤする」と伝えてください。そして待ちましょう。

相手は気になって、なぜモヤモヤするのかをあなたにたずねるでしょう。そうしたら、話を続けてください。

たとえば「あなたのこんな言葉や行動が心に引っかかった」と話せば、相手はなぜそんなふうに感じたのか、と問い返してくるでしょう。

このように段階を追って、会話を進めていきます。
そうすれば、いきなり怒りが爆発して大ゲンカになったり、相手が逃げてしまったりするという失敗を避けられます。

慎重に言葉を選べというのは、怒りの感情を無理に隠せという意味ではありません。
怒っていることを相手に上手にわからせるために必要なことなのです。

鈍感な相手には、いっそ「私は怒っているんだよ」とさらりと伝えたほうがいいこともあります。

どう思われるかわからないからと、相手の反応をうかがって、遠回しに話さないように気をつけてください。

さもないと、あなたが腹を立てていることを相手に理解してもらえず、よけいに状況がこじれてしまいます。

(本稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・再構成したものです)