夢や目標を実現できる人、できない人の差はどこにあるのか? その答えは、「習慣化」にある。『成功者がしている100の習慣』(ナイジェル・カンバーランド著、児島修訳)は、長年のコーチング経験を通して著者が見つけた、「成功者たちに共通する習慣」をまとめた話題の1冊だ。本書には、あらゆる人が実践できるアイデアだけが紹介されている。だが、そのすべてを行う必要はなく、自分に適したものを選んで行動に移すだけでOKだ。「成功しない人は成功者の真似をしない」と著者は言う。うまくいっている人の真似をすることが成功への第一歩になるのだ。(構成:瀬田かおる)
窮地に立たされた時にどう振る舞うか
忙しいと不機嫌になる。失敗したことの責任を他人になすりつける。このように自分の感情のおもむくままに振る舞っていないだろうか。
心穏やかな時に良い人として振る舞うのは簡単だ。誰にでもできる。しかし、窮地に立たされたときこそ、その人の本質が表れてくるものだ。
「本当の成功」を手に入れるためには、いかなるときも自分の感情をコントロールできることが大切になってくる。感情的になってから後悔しても遅いのだ。
忙しい時には無理せず人に頼る、自分の失敗だと認めたうえで迅速な対応をし、二度と同じ失敗をしないように対策を打つ。
このように、窮地に立たされたときに良い行動をとれることが、本当の成功を手にするために大切になってくる。
しかしこれは、一朝一夕でできるものではない。窮地に立たされても良い行動が行えるには、心の知能指数(EQ)を高め、あらゆることから学びを得ようとする姿勢でいる習慣が必要となってくる。
相手の立場になって考える
相手の立場で物事を考えることは一見難しいことのように思えるが、ほんの些細なことから実践することが可能だ。
例えば、メールを送る際には相手がパッと見て要件が分かるように箇条書きにするとか、返信が欲しい場合にはメールの件名にカッコ書きで要返信と書いておく。
これらは、相手の大切な時間を奪うことを避けられる。また相手を理解しようと努めることで、何が相手のために必要なのかが分かってくるはずだ。
このことは、感情的になって思わぬ行動をとり、失敗することを防ぐことにもつながる。
相手の立場で物事を考えることで、間を置いて冷静に対処できるので相手に安心感を与えることができる。
やがてそれは自分の心も穏やかになり、本当の成功を引き寄せるチャンスが増えるというわけだ。
本書では、詩人マヤ・アンジェロウの言葉が紹介されている。
人はあなたが言ったことを忘れる。あなたがしたことも忘れる。でも、あなたについてどう感じたかは決して忘れない(p.412)
人に何をしてもらったかは忘れてしまっても「あの人は○○な人だ」といったイメージは残る。その「○○」にプラスの言葉が入るような行いをしたいものだ。
「日常からを学び」を大切にする
学校に通ったり、本を読むことだけが学びではない。日常生活のあらゆるシーンや、テレビ番組、小さな子どもからも学びを得ることができる。
そしてどんな場面や体験からでも学びを得るためには、「謙虚な姿勢」が必要だ。
分からないことがあれば、年下に対してであろうと素直に教えて欲しいと言えるだろうか。
どんな立場にあっても、年齢を重ねても、自分にはまだまだ知らないことばかりだと謙虚な心を持って接することが大切だ。
そして何といっても一番学びを得ることができるのは、失敗や苦しみを乗り越えた時だ。
失敗や苦しみの渦中にいるときは苦しくて逃げ出したくなるだろう。
しかし、どうにかしてその難局に対処しているとき、誰かがそっと手を差し伸べてくれた時に本当の優しさを知ることができるし、歯を食いしばってその苦しみを乗り越えた時には、自分に自信がついていることに気づくはずだ。
著者は本書の中で「人生は大学だ」と書いている。本当にその通りだ。
日常生活を送っていると実にあらゆる場面に遭遇する。だからこそ、些細なことからも学びを得られるように、素直な心でいることが大切なのだ。
また、せっかく得られた学びを忘れないために、今日一日どんな学びがあったのかを、日記に書き出してみよう。書きためたものを見返したとき、新たなアイデアが生まれるチャンスにもなるのだ。
そう考えると、最悪の体験も「学びのチャンス」とプラスにとらえることができる。なにしろ、最悪の体験ほど多くのことを学べるし、ひいては成功のチャンスになるのだから。
学びをやめるのは、死の始まりだ。――アルベルト・アインシュタイン(P.51)
ナイジェル・カンバーランド(Nigel Cumberland)
作家、リーダーシップ・コーチ
1967年、イギリスのヨーク生まれ。ケンブリッジ大学卒業。世界最大級の人材サービス会社Adeccoや世界3大ミシン糸メーカーCoats plcで財務部長を務めた。シルクロード・パートナーシップの共同創立者。ロンドンとドバイを拠点に、同社を通じて企業幹部を対象にリーダーシップ・コーチングやメンターリングをおこなう。ハーバード大学メディカル・スクール付属コーチング養成機関の創立研究員でもある。これまで香港・ドバイ・ブダペスト・サンチアゴ・上海・ドバイで暮らし働いた経験から人生で成功するヒントを得た。これまでに出版した8冊の著書は、ドイツ・中国・ポルトガル・スペイン・ロシア・チェコ・スロバキア・ルーマニア・ドバイをはじめとする中東諸国・ブラジルなどの各国で翻訳されている。
児島 修(こじま・おさむ)
英日翻訳者
1970年生まれ。立命館大学文学部卒業(心理学専攻)。訳書に『自分を変える1つの習慣』『脳にいい食事大全――1分でアタマがよくなる食事の全技術』『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法――コロンビア大学ビジネススクール最重要講義』(ダイヤモンド社)、『やってのける』『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』(大和書房)などがある。
【著者からのメッセージ】
成功の可能性を最大限に引き出す
「マインド」と「行動」
あなたにとって、成功とは何でしょう? 望んでいるのは、どんな成功ですか?
成功とは、目的や目標、夢、希望を実現することです。
その定義は一人ひとり違います。
ある人にとっては大きな夢でも、別の人にとっては興味のないものもあります。有名なシェフになりたい人もいれば、料理嫌いの人だっているのです。
つまり「成功した人生」とは、自分にとって大切な大小様々な夢や目標を多く達成した人生だと言えます。
そしてこの本は、あなたの成功を大きく手助けするための本です。
これから、野心的な夢から小さな目標まで、あなたが何をすれば成功を手に入れやすくなるかを、詳しく説明していきます。
まずは、自分にとって成功が何を意味するのかを考えてみましょう。
・会社で昇進する
・仕事で能力を発揮する
・痩せる
・毎晩ジョギングする
・本を書く
・健康な老後を過ごす
・子育てをまっとうし、孫の顔を見る
・心穏やかに生きる
・住宅ローンを完済する
・資格を取る
・後悔せずにやりたいことをする
・家族や仲間との時間を大切にする
・外国語を学ぶ
・病気を治す
・貯金をする
・仕事を愛し、ストレスなく働く
・いま手にしているものに満足して生きる
本書を読み進める前に、まずは自分の目標や夢が何かを一覧にしておきましょう。
順番は気にせず、心に浮かんだものを書き出します。
目標や夢は、いくらでも浮かんでくるはずです。その日の気分によっても変わります。
一つの山の頂上に立てば、別の山々の景色もそれまでとは違って見えてくるものです。目標の優先度も、一つを達成したことで変わっていきます。
本書でこれから紹介する「成功者がしている100の習慣」は、仕事や人間関係、育児、マネー、健康、老後生活など、あらゆる領域であなたの夢や目標の達成に役立ちます。
100の習慣は、それぞれを二つのセクションに分けて説明していきます。
前半のセクションでは習慣のポイントを説明します。
後半のセクションではその習慣の具体的な実践方法を紹介します。今日からでも始められる、成功の可能性を最大限に引き出す「マインド」と「行動」にぜひ取り組んでみてください。
本書で紹介する習慣のなかには、当たり前のように感じられるものもあれば、新鮮に感じられるものもあるでしょう。いずれにしても、大切なのは頭で理解するだけではなく、実践することです。新しい習慣をつくることは、あなたを成功に導く「心のソフトウェア」を書き換えるようなものなのです。
本書で紹介する「成功者のマインドセット」を普段から意識し、行動に結びつけている人はわずかしかいません。
そしてそのわずかな人こそが、成功者なのです。
本書で紹介する習慣は、すぐにでも実践してみたいと思うものもあれば、そうでないものもあるはずです。どんな習慣に興味を持つかは、あなたの現在の状況と強く結びついているからです。「今の自分にはあまりピンとこないな」と思ったトピックは読み飛ばしても構いません。しばらくして興味が湧いてきたら、またページを開いてみてください。
なぜ著者は成功に関心を持つようになったのか?
本書のアイデアは、一五年以上にわたり世界中の様々な人々にコーチングをしてきた私の経験から生まれました。大勢の人々とそれぞれが抱える問題の解決に取り組むなかで、私は成功する人には年齢や分野を問わず共通する習慣があることに気づきました。
その習慣を最重要の一〇〇個に厳選し、読者のみなさんの成功に役立つ情報としてお届けするのが本書です。
私自身、本書の内容の実践に取り組んできました。五○年の人生のなかで、私は失敗や挫折を通して学びながら、次のようなことを成し遂げてきました。
・幸せな結婚をし、二人の素晴らしい子どもを育てている(一六歳の息子、二四歳の継娘)。
・ケンブリッジ大学で職を得て、二六歳のときにはFTSE一〇〇企業の支店のファイナンスディレクターに昇格。
・世界を旅するという夢を実現し、合計二六年間を八ヵ国で暮らした。
・共同創業者として起業した会社を成功させ、数百万ドル規模で売却した。
・著者、講演者として豊富な実績を積んだ。
・コーチングを通して世の中の人たちの役に立ちたい、という願いを実現させた。
・自分自身であること、人生で手にしたことに満足する術を学んだ(これはおそらく私の人生にとって最大の成功です)。
私は、読者であるあなたが成功を手にすることを心から願っています。
そして、本書で紹介する習慣やその実践方法は、あなたが夢や目標を実現するために必ず役に立つと確信しています。
(『成功者がしている100の習慣』はじめに より)
本書の主な内容
序文
真の成功とは何なのか、
実現するには何をすればいいのか
はじめに
成功の可能性を最大限に引き出す
「マインド」と「行動」
1 夢を持っている
2 人の力を借りている
3 未来をつくる
4 心の知能指数(EQ)を高く保っている
5 人と逆のことをしている
6 仕事を遊びに変えている
7 朝に一日の計画を立てている
8 過去といい関係を築いている
9 十分な休養をとっている
10 一生、学び続けている
11 直感を信じている
12 ストレスにうまく対処している
13 人に好かれようと努力している
14 「イエス」と言うチャンスを逃さない
15 言うべきときは、はっきり「ノー」と言う
16 ボランティア活動をしている
17 コントロールできるものに集中している
18 家計をきちんと管理している
19 インターネットと適度に付き合っている
20 大切なことに集中している
21 大切なものに愛情を注いでいる
22 絶えず自分を刷新している
23 健康に気を配っている
24 「許すこと」の価値を知っている
25 自分に合った集団に帰属している
26 自信を持つための工夫をしている
27 感謝を言葉にして伝えている
28 モノに執着しない
29 周りの人と信頼関係(ラポール)を築いている
30 マインドフルネスに生きている
31 妥協すべきところは妥協している
32 仕事人間になっていない
33 自分のことを理解している
34 年をとることを受け入れている
35 外向型/内向型の枠にとらわれていない
36 新しいアイデアに心を開いている
37 良き親になるための努力をしている
38 快適な環境で生活している
39 安全地帯に閉じこもらない
40 身近な人に感謝している
41 知恵を深め、活用している
42 見本となる成功者がいる
43 失敗を恐れない
44 自分を大切にしている
45 思考をコントロールしている
46 他人に興味を持っている
47 自分を突き動かすものの正体を知っている
48 「足るを知る」の精神がある
49 親と仲良くしている
50 よく笑う
51 自分らしさを大切にしている
52 良質の睡眠をとっている
53 信念を曲げない
54 シンプルに生きている
55 今、実行する
56 モノより経験を優先させている
57 目標を書き出している
58 読書をしている
59 簡単に腹を立てない
60 寛容である
61 健康的な食生活をしている
62 周りと調和が取れている
63 ワーク・ライフ・バランスを保っている
64 老後をシミュレーションしながら生きている
65 ボディランゲージを活用している
66 友人を選んでいる
67 好奇心がある
68 約束を守る
69 不用意なコミュニケーションをしない
70 恐怖とうまく付き合っている
71 誠実である
72 専門分野がある
73 素直に謝ることができる
74 旧友を大切にしている
75 視点が大きい
76 テクノロジーを受け入れている
77 努力を継続できる
78 何かに依存していない
79 自然と接する機会が多い
80 知能を磨いている
81 人気ではなく人格に注目している
82 有害な人間関係は断ち切る
83 (今のうちに)祖父母から学んでいる
84 人格の向上に努めている
85 周りの人に感謝している
86 物事の良い側面に目を向けている
87 本物の成功を目指している
88 年を気にせず好きなことをしている
89 呼吸を大切にしている
90 旅行を楽しんでいる
91 日記をつけている
92 立ち止まり、新しい自分を探している
93 最悪の事態を予測している
94 「死ぬまでにやりたいことリスト」をつくり、一つずつ減らしている
95 環境に良い生活をしている
96 自分以外のものに時間と労力を捧げている
97 古い知識を捨てることができる
98 メンタリングを実践している
99 「人の記憶に残りたい」自分を目指している
100 悔いのない人生を送ろうとしている