「オレンジの悪魔」という異名をもつ京都橘高等学校吹奏楽部。日本テレビの『笑ってコラえて!吹奏楽の旅』や、福山雅治さんが全国高校野球選手権大会の第100回大会のために制作した『甲子園』のミュージック・ビデオに登場する“跳躍するマーチングバンド”として、「ああ、あの京都橘ですね」という方もいらっしゃるでしょう。全日本マーチングコンテストの常連校であり、2007年から3年連続全国大会出場を果たし、08年、09年、15年は金賞を受賞。NHK Eテレ スクールライブショー 吹奏楽バトルで優勝し、世界最大100万人の集客を誇るアメリカのローズパレードに日本で唯一、複数回の出場。こうした実績もさることながらユーチューブで知ったという声も多く、演奏しながら走り、飛び跳ね、踊る様子は、「これはスポーツだ!」「信じられない!」「見るたびに元気が出る!」と、国内外に熱狂的なファンを生み、人気の面では全国レベルの高校吹奏楽部の中で抜きんでた存在となっています。無数の動画の中には、1000万回を超えて再生されるものも多くあり、合わせれば総再生回数は軽く1億回を超えるほど。普通の高校生の普通の部活動がなぜこれほどまでの世界的人気を得るようになったのか? 同校前顧問の田中宏幸先生の新刊『オレンジの悪魔は教えずに育てる』から、その最大のきっかけとなった出来事を紹介します。(初出:2021年1月26日)
世界最高峰のマーチングイベント、ローズパレードに出演
2018年1月21日。京都橘中学・高校の校内にあるフェスティバルホールで、「ローズパレード報告演奏会」が開催されました。
この年の元旦、オレンジの悪魔たちは、アメリカ・カリフォルニア州パサディナで行われたローズパレードに出演しました。言わずと知れたカレッジフットボールの頂上決戦、ローズボウルに先駆けて催される世界一のパレードで、アメリカの国民的行事になっています。
世界中のマーチングバンドの中から選ばれた、わずか20団体だけが参加を許されます。巨大な人形や風船で飾られた50台近くのフロート車、数百頭の馬、そしてマーチングバンドが、スタート地点のトーナメント・ハウスからヴィクトリー・パークまで、およそ9キロを2時間半で行進します。
沿道を埋め尽くすのは何十万人もの観客。全世界にテレビ中継もされる大規模なものです。京都橘は現役生全員と卒業生混成による“オール橘”200名で堂々とパレードし、アメリカの人々を魅了しました。
このアメリカ遠征では元旦のローズパレードだけでなく、12月24日にアナハイムのディズニーランドで行われる「クリスマスパレード」にも参加。ディズニーメドレーに合わせて元気な演技・演奏を披露し、世界中から集まった来園者を楽しませました。