別の角度から見ると、地方都市のように建築費の割合が高いエリアの値上がり率が首都圏・近畿圏を超えることもあり得ない。マンション価格の構成要素である建築費と用地価格のうち、用地価格の方が高騰の幅が大きいからだ。

 それに、本当に2倍以上に値上がりしていたら、周辺住民が物件を買えなくなるので、売れ行きが問題になるはずだ。実際はそうなっていないからこそ、間違いは明らかということになる。

 とはいえ、2倍以上ではないにせよ、札幌市と沖縄県の値上がり幅が大きいことは事実だ。こうしたエリアは周辺住民ではなく、東京在住の人が買うリゾートマンションが多い。不動産が高騰する際に、最終期のあだ花のように値上がりするのがリゾートマンションだ。

 そして、不動産価格が下落に転じたときに最も下がるのもリゾートマンションである。自宅として買う需要を「実需」というが、実需に支えられた市場は大きく崩れにくい。その意味でも、実需が少ないのに価格が高騰しているエリアほどリスクが高いと考えてもらった方がいい。

新築マンションの中に紛れる
買うと損する「高リスク物件」

 ここまで中古マンション価格の話をしてきたが、地方の新築マンション価格はこれ以上に値上がりしている。そして、新築を購入する方が、中古よりもリスクが高い場合もある。

 リスクの度合いを知る上では、次の手法が役に立つ。

 地方で新築マンションを購入する場合に、買いたい新築物件と、その周辺にある中古物件の「平方メートル単価差」を築年数の差で割って、1年当たりの下落率を計算するのだ。

 例えば、新築と築10年の物件の「平方メートル単価差」が30%なら、1年間の下落率は3%になる(30÷10=3)。

 この数字が2.6%を超える場合は、買って得をする確率よりも、損をする確率の方が高いことになる。

 今の変動金利水準で住宅ローンを借りると、元本の2.6%程度を毎年の返済額に追加で支払わねばならない。にもかかわらず、その金利額を上回るペースで「物件の価値」が失われていく。

 このことは、新築マンションを「売りたい」と思ったときに響いてくる。居住年数が一定のラインを超えると、「物件に付いた値段が住宅ローンの残債を下回っている」というケースが起こり得るのだ。