国交省発表の「不動産価格指数」も
信ぴょう性に疑問符
その難題に取り組んでいる公的なデータは一つだけある。それは、国土交通省が発表している「不動産価格指数」だ。中古マンションの成約事例を用いて、都市ごとにインデックスを発表しているものだ。
サンプル数が少ないので、参考値扱いのエリアもある。とはいえ、これしか実態を説明できるデータがないので、不動産価格の分析・予測に使われることが多い。
しかし残念なことに、このデータは地方の信ぴょう性が低い。数値の上では、首都圏・近畿圏が全国の価格指数を下回り、首都圏・近畿圏よりも地方都市の方が値上がりしているが、これは現実と乖離(かいり)している。
2022年3月時点の価格指数を見てみると、全国が2010年比で78.0%増に対し、首都圏を指す南関東圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)は72.1%増、東京都は単体で75.6%増だった。
一方、北海道が154.8%増、東北地方が132.2%増、中部地方が79.6%増、九州・沖縄地方が118.0%と、地方の値上がり率が非常に高くなっている。
加えて、このサンプルには偏りがある。北海道のほとんどが札幌市、東北地方の多くが仙台市、中部地方は名古屋市が中心だ。九州・沖縄地方では、福岡県と沖縄県が中心になっている。
増加率が100%以上増加しているエリアは、マンション価格が2010年比で2倍以上になったことを意味するが、札幌市が約2.55倍というのはどう考えても実態を表していない。
こうした地方都市では、先ほど指摘したエリアの分散とサンプル数の少なさのために、価格の指数化は非常に難しい。