自分だけの「妄想」を「戦略」に落とし込む方法を具体的に解説した『直感と論理をつなぐ思考法』という本があります。ビジネスだけでなく個人の生き方にも圧倒的インパクトを与えるその内容は各業界のトップランナーたちに絶賛され、10万部を突破するベストセラーとなりました。また、その著者・佐宗邦威氏も、この7月に放送される「100分 de 名著」(NHK)で解説を務めるなど、改めて注目を集めています。本稿では、同書の中でもとりわけ個人の生活に役立つ部分を抜粋・再編集してお届けします。(初出:2023年1月13日)

「気の利いた感想」が言える人になる、たった1つの方法【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

「感想ありますか?」と聞かれて
ドキッとした経験

 何かを目にしても「自分なりの意見がなかなか持てない」という人がいる。

 当たり障りのないアイデアしか出てこないこともあるだろうし、もっとひどい場合には「とくに何も感じない」「なんの言葉も出てこない」というパターンもある。ただ、目の前のものをぼーっと見ているだけ。

 そんなときに、「何か感想はありますか?」とか「あなたの意見はどうですか?」などと聞かれて、途端に慌てふためいてしまった…などという経験がある人も少なくないだろう。

じつは「イメージと言葉の往復」の
トレーニングが少し足りていないだけ

『直感と論理をつなぐ思考法』の著者で、戦略デザイナーの佐宗邦威さんによれば、そのような「意味づけ」の活動を行ううえでは「言語脳とイメージ脳との往復」が欠かせないという。

 いわゆる左脳タイプで、いつも言語脳が優位になっている人は、自分が抱いた直感や感覚を経由することなく、言葉の世界だけでものごとを処理するのに慣れている。だから、何かを「説明」することは得意だが、「感想」や「意見」がなかなかうまくアウトプットできない

 では、言葉の世界とイメージの世界を行ったり来たりするためには、どんなことに気をつければいいのだろうか?

 感想を求められたときに、自分なりの視点を交えながらサラッと意見を言えるようになるには、何が必要なのだろうか?

 以下では、同書本文を引用しながら、具体的なトレーニング方法を紹介する。

「知覚する力」を磨きたい人に
おすすめのトレーニング方法

 大切なのは、言語とイメージを行ったり来たりすることだ。以降では、「視覚情報」を「キーワード」に落とし込むためのかんたんな練習法をお教えしよう。これは、ビジュアルカードを用いたトレンドリサーチなどでも採用されている方法だ。

 まずは1週間ほど期間を取り、毎日、気になったものを写真に収めてみる。ほしいと思った服、木陰で休んでいるハト、神経を逆撫でされた電車の中吊り広告、おいしかった定食屋さん、新発売のチョコレート、かっこいいクルマ、夕暮れどきの街並み……気になったものなら何でもいい。

 それらのうち、とくに気になった8枚程度をプリントアウトし、スケッチブックの上に並べてみよう

 写真がグループ分けできそうなら、大まかにまとめて配置し、写真をすべてスケッチブックに貼りつける。

 できるだけプリントアウトした写真でやってみるのが望ましいが、なかなか大変だという人は、デジタルな形式で似たことができるサービスなどもある。

「気の利いた感想」が言える人になる、たった1つの方法【書籍オンライン編集部セレクション】『直感と論理をつなぐ思考法』本文より

「目に見えるもの」だけでなく
「音や身体の感覚」も大事なきっかけ

 次に、正方形のポストイットを用意し、それぞれの写真のどこが気になったのかを言語化していく。文章にするよりは、Instagramのハッシュタグのように、なるべくキーワードの箇条書きがいい。

 最後に、全体を眺めながら、自分の関心がどういうところにありそうか、これまでアウトプットした「妄想」とどんな接点がありそうかといったことも振り返ってみよう。デザインの業界ではこれを「ムードボード」と呼び、アイデアを組み立てていくのに使うが、あなた自身の「ムード」を可視化するのにも役立つはずだ。

 知覚力を高めるうえでは、視覚(Visual)だけでなく、体感覚(Kinesthetic)や聴覚(Auditory)のスイッチもオンにすることを意識したほうがいい。日々のなかで、心が動いたものを写真に収めるという習慣は、何気なく素通りしてしまうものの前で立ち止まる訓練になるはずだ。

「感想が生まれる余白」を
自分のなかにつくれていますか?

 そうやって立ち止まる「余白」をつくれたら、周囲の雑音や話し声、温度・湿度、地面の感じ、人々の歩調などにも、ぜひ気を留めてみよう。

 そのためには「散歩」や「街歩き」が最良の習慣である

 健康のためのジョギングもいいが、そうした特定の目的を持たずに、ふらふらと歩いてみる「余白」を1週間のなかに数回確保するといいだろう。このときも、スマホのスケジュール帳などを使って、まず予定をブロックしてしまうことをおすすめする。