日本銀行Photo:PIXTA

交易条件悪化でGDP4%分の所得流出
利上げできない日銀

 9月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率は3%に達した。消費税率引き上げの影響が出た局面を除けば、31年ぶりの高い伸びだ。

 今年になって急速に進んだ円安の影響は、これから物価に反映されてくる。10月は40年ぶりの3.5%近辺となる可能性が高い。

 2%物価目標を大きく上回っているのだから、「日銀の異次元緩和はもう必要ない」という声も強まってきたが、日本の場合、原燃料や食料などの国際価格上昇により、交易条件が大きく悪化している点も注意が必要だ。

 交易条件の悪化は海外への所得流出を意味し、その規模は昨年来の累計で約20兆円、GDPの4%近くにも達している。

 潜在成長率が0.5%もあるかどうかの国にとって、GDP4%分の所得流出は重い。コロナ禍からの本格回復を目指す段階で、そこに冷や水をかけかねない要因のひとつがこの所得流出だ。

 世界同時不況も懸念される中、景気の下振れリスクは気になるところであり、その面から考えれば日銀は利上げできない。