日本代表が世界を驚かせた。中東カタールで開催中のサッカーW杯のグループステージ初戦で、4度の優勝を誇る強豪ドイツ代表を2-1で撃破する世紀の大番狂わせを演じてみせた。前半を0-1で折り返すも後半からシステムを変え、攻撃的な選手を次々と投入した森保一監督の積極的な采配で試合の流れが一変。逆転に成功した日本は27日のコスタリカ代表との第2戦でも勝てば、同日のスペイン対ドイツの結果次第で決勝トーナメント進出が決まる。(ノンフィクションライター 藤江直人)
W杯優勝国から初勝利!
先制を許してからの逆転勝利も初
カタールW杯の開幕が近づくにつれて、フィールドプレーヤーでは最年長となる36歳のDF長友佑都(FC東京)が、聞き慣れない言葉を日本代表チーム内で発するようになった。
「Coraggio! Coraggio!」
日本語で「勇気」や「勇敢さ」を意味するイタリア語の「Coraggio(コラージョ)」が、世紀の番狂わせを手繰り寄せ、世界を驚かせた要因の一つになったと実感していたからか。ドイツ代表を撃破した直後の取材エリアへも、長友は「Coraggio!」と叫びながら姿を現した。
「歴史的な勝利で、もう興奮しきっちゃってね」
長友が第一声で言及した「歴史的な勝利」は、決して大げさな表現ではない。
カタール大会が7度目のW杯となる日本は、これまでにW杯優勝経験国と2度対戦している。1998年のフランス大会でアルゼンチン代表と、06年のブラジル大会ではブラジル代表とともにグループステージで対戦。前者は0-1で、後者は1-4で敗れている。
直近では14年のブラジル大会を制したドイツの優勝回数は4度。ブラジルの5度に次いで多く、ヨーロッパ予選で敗れて今大会には出場していないイタリア代表と並んでいる。W杯の歴史上で8チームしかない優勝経験国から、日本は3度目の挑戦にして初めて勝利を挙げた。
しかも、大きな付加価値も付けた。W杯で通算22試合を戦った日本が相手に先制を許したのは、前回ロシア大会までで8試合。結果は1分け7敗と一つも勝てていない。つまり、前半に先制されながらも後半に2ゴールを奪ったドイツ戦は、W杯における日本の初めての逆転勝利となった。
ロシア大会後の18年9月に船出した森保ジャパンも、実は逆転勝ちが極めて少なかった。
昨夏の東京で4位に入ったU-24代表の指揮官も兼任。A代表と合わせて森保一監督が指揮を執った計86試合のうち、0-0の4試合を除いた82試合の詳細をあらためて振り返ってみる。