2022年のワールドカップ・カタール大会を目指し、森保ジャパンが発足してまもなく1年になる。準優勝したアジアカップをUAE(アラブ首長国連邦)で、グループリーグで敗退したコパ・アメリカをブラジルで戦った一方、現時点で「10」を数える国際親善試合はすべて日本国内で組まれている。新たに決まった9月と11月の国際親善試合も、ともに国内での開催となった。海外の厳しい環境下でプレーしてこそ真の強化につながる、という図式を理解していても実現に至らない舞台裏には何があるのか。対戦国にヨーロッパ勢が含まれていない事情を含めて追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
直近1年の「国際親善試合」は
すべて日本で開催、対戦相手に偏り
また日本国内での開催か。なぜ海外で強化を図らないのか――。
日本サッカー協会(JFA)から今月上旬に発表された、森保ジャパンの9月以降の一部日程に対して、こんな思いとともに懐疑の視線が向けられている。
森保一監督に率いられる日本代表は、活動予定がない7月と8月を経て、9月5日にカシマサッカースタジアムで、11月19日にはパナソニックスタジアム吹田で、対戦相手未定の状況でそれぞれ国際親善試合を行うことが決まった。
昨夏のワールドカップ・ロシア大会後に、西野朗前監督から森保監督にバトンが託されて、まもなく1年になる。この間、マッチメークされた国際親善試合は「10」を数えるが、新たに決まった9月と11月の2試合を含めて、実はすべてが日本国内での開催となっている。
整備された美しいピッチの上で、スタンドを埋め尽くした大歓声を背に受けながらプレーできる。一方で対戦相手は日本への長旅による疲れと時差による影響で、実力を出し切れないことも多い。こうした理由から、条件が逆になる海外での国際親善試合の方がチームの強化にかなう。
関係者だけでなく代表選手たちからも長く指摘されてきた図式を、マッチメークを担うJFAの技術委員会も理解している。それでもなかなか実現に至らない事情が存在してきた中で、昨年9月以降は国内開催の比率と対戦相手の偏りがより顕著になった。
北海道胆振東部地震の影響で中止となった昨年9月7日のチリ代表戦を含めて、森保ジャパンの対戦相手は南米勢が5、北中米カリブ海勢が4、アジア勢が1となっている。理由は追って記すが、9月と11月の対戦相手も高い確率でアジア勢となるだろう。
ここまでを見ても分かるように、世界をリードするヨーロッパ勢と対戦していない。しかも現時点までの現象ではなく、今後も2022年のワールドカップ・カタール大会の直前まで対戦できない可能性が高い。国際親善試合を巡る事情が、急変してしまった理由は何なのか。