【最新の認知症治療を実践する脳のカリスマが30年超の長寿研究から導いた幸せな生き方】
2010年代には大ベストセラー『100歳までボケない101の方法 脳とこころのアンチエイジング』で100歳ブームを巻き起こした医学博士・白澤卓二医師渾身の自信作『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』が完成。
人間の限界寿命とされる120歳まで生きる方法を提示します。
現在の脳のパフォーマンスを上げて、将来寝たきりや認知症にならずに長寿を目指す方法論が満載です。

健康オタク万歳!徳川家康が平均寿命の2倍生きた理由Photo: Adobe Stock

江戸時代の平均寿命は35~40歳程度

 平均寿命が短い環境では、長生きする人は少ないでしょうか? そう考えるのは正しくありません。

 少し時代をさかのぼって、長寿について考えてみましょう。

 江戸時代の平均寿命は35~40歳程度と推測されています。これは全員が35~40歳で亡くなっていたということではありません。

 当時は、例えばはしかが大流行して子どもが大勢亡くなれば、それだけで平均寿命はガクンと下がりました。伝染病がはやって若い人が命を奪われれば、これもまた平均寿命を大きく縮めました。

平均寿命の2倍以上生きた人たち

 その一方で、漢方薬を自分で調合するなど、独自の健康法を実践していたとされる徳川家康は、享年75歳です。

 江戸時代の健康法をまとめた『養生訓』の著者である貝原益軒は享年85歳で、83歳の時点で歯がすべて残っていて、視力も衰えていなかったという報告さえあります。

 蘭方医で『解体新書』などを残した杉田玄白は、享年85歳。

 江戸時代の偉大なアーティストである葛飾北斎は、90歳まで生きました。

 最後の将軍である徳川慶喜は、歴代の将軍の中で最も長生きで、享年77歳。

 慶喜は将軍職から解放されてから写真や狩猟、謡曲や囲碁など趣味に明け暮れていたようなので、ストレスをあまり感じなかったことが長生きの要因になったとも考えられます。健康法や医学に通じた徳川家康や貝原益軒、杉田玄白が長生きしたのも合点が行きます。

 市井の人の寿命を詳細に知ることは難しいですが、平均寿命が短いからといって、全員が短命になるわけではないことがわかるでしょう。平均寿命が短かった江戸時代であっても、正しい知識をもってそれを選択した人は、長生きできたということです。

 少し遠回りになりましたが、江戸時代と現代は何が違うのか?

 答えはいくつもありますが、圧倒的に違うのは現代のほうがはるかに多くの選択肢があるということだと思います。

 現代に生きている私たちが空腹を感じたとき、どうするでしょうか。
 買い置きしたおやつで小腹を満たす?
 コンビニで弁当や菓子パンを買う?
 ファストフードで食べ物を調達する?
 近所のスーパーで惣菜を買う?
 冷凍庫にある冷凍食品を電子レンジで温めて食べる?
 家にある材料で料理する?

 体の具合が悪くなったときは、どうでしょう。
 しばらく横になってみる?
 市販の薬を買って飲む?
 湿布を貼ってみる?
 サプリメントで栄養を補う?
 病院に行く?

 少し想像を膨らませて、80歳を過ぎてがんや難病になったらどうしましょうか。
 何がなんでも手術を受ける?
 抗がん剤や最新薬を試みる?
 治験に参加してみる?
 痛みをなくす処置を受ける?
 代替医療に望みを託す?

選択肢の多さを武器にする

 食べることと体の不調に関する選択肢をざっと挙げただけでもこんなにあります。

 そのほかのこと、生活習慣やら運動やら、教育やら働き方、移動手段などを考えたら、現代人はほとんど無限の選択肢を持っているのです。これをどう選んでいくかが、「長寿脳」へのカギを握っていると私は考えています。

本原稿は、白澤卓二著『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』からの抜粋です。この本では、科学的に脳を若返らせ、寿命を延ばすことを目指す方法を紹介しています。(次回へ続く)

監修 お茶の水健康長寿クリニック院長・医学博士・医師 白澤卓二
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大学院医学研究科博士課程修了。現在、お茶の水健康長寿クリニック院長。