「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
認知症予防が欠かせない事実
【前回】からの続き 難しいというよりも、残念ながら不可能だと覚悟したほうがいいでしょう。その点については、本書の序章で触れた通りです。認知症は、脳が部分的にダメージを受けます。ダメージを受けた部分の脳は、元の健全な状態に戻せないため、認知症は努力次第で進行を遅らせることはできるとしても、治療するのが難しいのです。
細胞は新陳代謝をしているので、ダメージを受けた細胞は新たに再生されます(たとえば、皮膚の細胞はおよそ1ヵ月の周期で新たに生まれ変わっています)。ところが、脳の神経細胞は一度ダメージを受けると、二度と再生しないのです。
だからこそ、本書で紹介するような認知症予防を自分ごととしてとらえ、できるだけ早いうちから実践することが大事なのです。
脳機能を安定させるための仇(あだ)
脳の神経細胞は互いに連絡して、ネットワークをつくって機能しています。脳の主要な細胞には、「ニューロン」「アストロサイト」「オリゴデンドロサイト」といったものがあります。このうちオリゴデンドロサイトという細胞は、新たにネットワークをつくる過程を邪魔するため、神経細胞は再生しないのです。
それはなぜかというと、おそらく神経細胞のネットワークを安定させるためだと考えられます。神経細胞が無秩序に再生してネットワークがどんどん広がってしまうと、脳がまともに働けなくなるからです。このしくみが仇(あだ)となっているのでしょう。
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)