岸田内閣は人へ投資の一環としてリスキリングに5年で1兆円の資金を投じる。しかし、現在予定されている方策では生産性向上や賃上げを実現するのは困難だろう。成果を上げるために政府がなすべき4つの施策を提案する。(昭和女子大学現代ビジネス研究所特命教授 八代尚宏)
リスキリングに単に税金を
つぎ込むだけでは生産性向上せず
「新しい資本主義」の大きな柱として「人への投資」がある。11月12日に開かれた日経リスキリングサミットで、岸田首相は、リスキリングと労働移動の円滑化を両輪で進めていかなければならないと強調した。
このためには、現行の3年4000億円の人への投資の政策パッケージを大幅に拡充し、5年で1兆円としてリスキリングへの公的支援を強力に進めるという。
しかし、肝心のリスキリングの内容は企業に丸投げである。このため、各省庁からの予算要求を寄せ集めて第2次補正予算が作成された。しかし、コロナ時の持続化給付金等と同様に、単に税金をつぎ込むだけで真の生産性向上と賃上げに結び付くのだろうか。
筆者は現在の方策では結び付かないと考える。次ページからその理由と効果を生むためにどのような方策が望ましいかを論じていく。