地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、西成活裕氏(東京大学教授)「とんでもないスケールの本が出た! 奇跡と感動の連続で、本当に「読み終わりたくない」と思わせる数少ない本だ。」、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する。

恐竜の時代が終わりを迎えた頃、植物の世界に起きた「静かな革命」とは?Photo: Adobe Stock

花の進化

 恐竜の時代が終焉を迎えようとしていたころ、植物の世界にも静かな革命が起きた。花の進化だ。

 顕花植物(花をつけ、種子をつくる植物)は、水辺を小さく這うようなものからはじまり、やがてもっと一般的なものになった。

 そして、一億年後の現在、陸上植物の主流となっている。

有利な世界を作る

 花は、風や天候や偶然に受粉を頼らず、送粉者を惹きつけるのが長所の一つだ。

 顕花植物は、多くの生き物がそうしてきたように、環境まかせではなく、自分に有利なように世界を変えたのだ。

 だから、花の進化と同時に、送粉する昆虫、特にアリ、ミツバチ、ハチ(総称して膜翅目)、チョウ、ガ(鱗翅目)が激増したことは、おそらく偶然ではない。

 このような昆虫は、数百万年前からすでに存在していたが、顕花植物の進化によって、昆虫の進化も加速された。

 植物と送粉者のなかには、お互いがいなければ生きていかれないほど密接な関係のものもいる。

 たとえば、イチジクは、この植物を中心に生活を営んでいるイチジクコバチがいなければ繁殖することができない(訳注:八百屋で販売されている国産のイチジクは受粉の必要がないためイチジクコバチはいない)。

 私たちがイチジクの果実だと思っているものは、実はハチによる、ハチのための生息地なのだ。

 ユッカとそれに付随するガのあいだにも、同じような依存関係がある。イチジクとイチジクコバチは、ある意味で不可分な一体の生き物であり、ユッカとユッカガにも同じことがいえる。

(本原稿は、ヘンリー・ジー著『超圧縮 地球生物全史』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)