生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か…。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が11月28日に発刊された。

養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」と各氏から絶賛されたその内容の一部を紹介します。

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高くなる植物

 光合成は太陽の光を使うので、背が高い方が有利である。そのため、植物はもっとも背が高くなる生物になっている。日本で一番高い樹木は、京都にある花脊(はなせ)の三本杉の一本で、高さは62.3メートルだ。ちなみに巨木は、山奥で自然が残っている場所よりも、都会に多いらしい。意外な気もするが、考えてみれば、動物も野生でいるよりは、動物園で飼育した方が長生きする。

 樹木も人間によって適切に管理されている方が、長生きできるのだろう。京都の花脊の三本杉も、峰定寺(ぶじょうじ)のご神木だそうだ。

 世界で一番背が高い木は、アメリカのカリフォルニア州にあるセコイアで、高さは115.5メートルである。

 なぜ植物がこんなに高く生長できるのかは、昔から不思議に思われていた。なぜなら、どうやって水をそんなに高いところまで運べるのかが、わからなかったからである。

 一番考えやすいのは、大気圧によって水を持ち上げる方法だ。コップを水に沈めて、コップの中を水で満たす。それから、コップを逆さまにして、コップの底を水面の上に出す。

 すると、コップの中の水面は、外側の水面よりも高くなる。これは、コップの外側の水面を大気が圧しているからだ。この水面を圧す力を大気圧といい、これが結構強い。ものすごく細長いコップで同じことをすると、コップの中の水面は10.3メートルまで上がる。

 しかし、高さが10メートルを超す樹木はいくらでもある。100メートルを超す樹木だってある。そんな高い樹木のてっぺんまで水を運ぶのは、大気圧には無理である。