行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱のうずに巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はJT、明治ホールディングスなどの「食品/嗜好(しこう)品」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
食品/嗜好品業界では全4社が増収も
利益面では明暗鮮明
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の食品/嗜好(しこう)品業界4社。対象期間は2022年5~9月の四半期としている(5社とも22年7~9月期)。
各社の増収率は以下の通りだった。
・JT
増収率:19.3%(四半期の売上収益7417億円)
・キッコーマン
増収率:26.2%(四半期の売上収益1576億円)
・味の素
増収率:23.5%(四半期の売上高3382億円)
・明治ホールディングス
増収率:2.1%(四半期の売上高2704億円)
食品/嗜好品業界では、全4社が増収という結果だった。この4社に共通しているのは、税率アップや原材料価格の高騰を受け、「怒涛の値上げ」を行っていることだ。
紙巻きたばこの「メビウス」、調味料の「キッコーマンしょうゆ」や「味の素」、マーガリンの「明治コーンソフト」など、4社がこれまで値上げした製品は枚挙にいとまがない。
今回分析対象とした四半期(22年7~9月期)からは外れるが、10月のたばこ税増税に合わせてJTが加熱式たばこスティックを値上げするなど、各社の「値上げラッシュ」は今なお続いている。
値上げの目的は言うまでもなく、原材料価格の高騰などによるコスト増に対応し、安定的に利益を創出することだ。
だが実は、同様に値上げを行った4社の中には、上半期累計の営業利益が前年同期比で2桁減となり、通期の利益予想を唯一下方修正した企業が存在する。
利益面で「独り負け」の1社とは――。次ページ以降では、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、利益面の明暗についても詳しく解説する。