CEOの役割photo AC

「経営観は、人生観・世界観とともにリベラルアーツ(自由に生きる技術)を形成する、われわれ人間が確立すべき概念である。経営観を確立することができれば、自身の心に強固な羅針盤が育まれ、一切針路に惑い見失うことなく、人生や経営を全うすることが可能になる」。書籍『最高経営責任者(CEO)の経営観』の著者、株式会社TS&Co.創業者兼代表取締役最高経営責任者(CEO)の澤 拓磨氏はそう語る。本書は著者が考える経営観の解説とその実践についてまとめた一冊だ。

CEOと経営は一心同体、運命共同体

 結論から述べると、CEOの役割は「結果を出し続けること」。これは、CEO固有の役割である。経営とは結果を出し続ける行動であり、つまりは、CEOは「経営を行い継ぐ人」なのである。

 CEOは、経営当事者の中で、未来への自由と責任を享受し、経営上の重要な決断や行動管理などを担う唯一の「全原因を創造できる存在」であるため、経営結果の差はすべてCEOが原因となる。

 例えば、われわれの予測や想像力を超えた不可抗力的なアクシデントやブラックスワンの影響に対しても、CEOはまったく無力ではない。事態発生前後の決断や行動管理などによっては、結果を変えることができる。リスクに対して不断に目を配り、タイムリーに対応策を打てば、影響を回避したり被害の最小化に成功することも可能である。つまり、経営結果の差を司るのは全原因を創造できる存在であるCEOにほかならず、経営の命運はCEOの双肩にかかっている。まさに、CEOと経営は一心同体、運命共同体なのである。

 その意味で、CEOはChief Executive Officerであるとともに、経営に関するあらゆるテーマ・課題に精通し目を配る“Chief Everything Officer”、“総合格闘家”、“総合芸術家”たる覚悟が必要である。

 なお、会社組織においては、内規による権限と責任の限定や、CEOに許された物理的な時間の制約が存在することから、実行面を含めてChief Everything Officerの機能を担うことは難しいが、CEOに、経営に関するあらゆるテーマ・課題に精通し目を配る“Chief Everything Officer”、“総合格闘家”、“総合芸術家”たる覚悟が必要である点に変わりはない。

 経営結果の差はすべてCEOが原因である以上、言うまでもなくCEOは自責思考でなければならない。ご存じのように、責任の所在を自分に求めるのが自責、他者に求めるのが他責である。

 常に自責で考え、他責は退ける。

 例えば、同じ条件でスタートした競合・ライバルとの彼我の差が生じている場合も、原因はすべてCEOにある。素直な心で事実を客観的に受け止め、そこから得た学びを次のサイクルに活かしていけば良いのだ。

 理不尽な事態に直面し、他者に責任の所在を求めたくなることがあるかもしれない。そんな時でも、CEOたる者は他責思考の甘い誘惑に打ち勝って、自責思考を貫く強さが必要となる。もしも他責癖を自責に修正できないとすれば、CEOを担ううえではミスマッチの人材と言わざるを得ないだろう。