総予測2023#63Photo by Masato Kato

2023年10月、酒税改正が行われる。ビールは減税となることから、主力の「スーパードライ」は22年に行ったリニューアルの勢いそのままに追い風を受ける。問題は増税となる新ジャンルだ。逆風下でどう戦うのか。特集『総予測2023』の本稿では、アサヒグループホールディングスの勝木敦志社長が酒税改正下での「新戦略」を激白した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

1987年の発売以来初のスーパードライ刷新
海外比率増加で「リスクを取りやすくなった」

――2022年は、1987年の発売以来初めて、「スーパードライ」をフルリニューアルしました。

 リニューアル後は、好調に推移しており、22年1~10月の販売数数量は前年同期比は119%と好調です。リニューアルに踏み切れたのは、二つの要因があります。

 一つ目が、国内で「リスクを取りやすくなった」こと。かつてわれわれは国内酒類事業への偏重、とりわけ「スーパードライ一本足打法」が課題だと言われてきましたが、今はそうではありません。

 度重なるM&A(合併、買収)によって、売上高に占める海外構成比が高まっています。国内事業で何か失敗をしたとしても、企業の屋台骨が揺らぐような状況ではなくなりました。そのため、思い切ってリスクを取れるようになったのです。

 同様のことは、21年9月に発売したビール「マルエフ(アサヒ生ビール)」についても言えます。かつてであれば、同じビールカテゴリーのスーパードライとの食い合いを恐れて発売には至らなかったでしょう。

 二つ目が、「リスクの可視化」に注力していることです。消費者による味の評価やスーパードライのユーザー数、あるいはブランド評価を定量化することで、リニューアルに踏み切れたのです。

――23年10月には、酒税改正が行われます。ビールは減税になるので「追い風」が吹く一方で、新ジャンル(第三のビール)は増税されるので「逆風」となります。

ビールは、スーパードライがリニューアル後好調に加え、23年の酒税減税でさらに勢いに乗る。では、向かい風が吹く新ジャンルではどのような方策を講じるつもりなのか。次ページでは、勝木社長がポスト・酒税改正を睨んだ「新戦略」を明らかにするとともに、23年のビール類の「値上げ方針」についても見通しを示した。