今、この場でできる「自力整体」を教えてくださいますか。

――コリや痛みが出やすい「姿勢のクセ」を教えてください。

矢上:「脚を組んで座る」のは、今すぐやめたほうがいいですね。脚を組むことで、体の片側が不自然に引っぱられます。すると、片側の筋肉は緊張を強いられ硬くなり、血流もリンパも滞るんです。これが、コリや痛みの原因です。「猫背」の人も、つねに胸郭が硬く縮こまっていますから、血行不良になりやすいです。とくに呼吸が浅くなっていますから、血中酸素も不足しています。これが、だるさや疲れの原因をつくるんです。

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――「自力整体」を写真で見ると、ヨガと似ているようにも見えます。違いを教えてください。

矢上:たとえば、現代の「ヨガ」は、心身の緊張をほぐし、心の安定を目的としておこなう方が多いと思います。一方「自力整体」は、心身の緊張をほぐすとともに、自分で自分の体を直し、痛みを取り除くことを目的としています。

――私は極端に体が硬く、たとえばヨガをおこなうと筋肉痛になったりしますが、「自力整体」は体が硬い人でも、ムリなくできるでしょうか?

矢上:むしろ、体が硬い人こそやっていただきたいのが「自力整体」なんです。たとえば、ヨガはポーズの完成までに細かい指導があり、体が硬い方がムリしておこなうと筋肉痛になることもありますが、「自力整体」は、ポーズの完成や柔軟性はまったく関係ありません。ほぐす動きがメインです。やっていくうちに、体はどんどん柔らかくなっていきますから、安心してください。

――たとえば座って前屈をするとき、手が足先に届かないレベルでも大丈夫でしょうか?

矢上:大丈夫です。「自力整体」は、手が足先につくのを目的としていないんです。体が硬い人でも、「ある程度の動き」ができればOK。なぜなら、前屈をやれる範囲でおこなう行為自体が、硬い筋肉や関節に「深い刺激」を与えることにつながるのですから。

――最後までペタッとつかなくても、その刺激自体が体にいいということですね。

矢上:そうなんです。プロセスの中で起こる刺激そのものが、直す行為なんです。しばらく続けていくと、関節の痛みが取れていたり、不快症状が緩和されていたりします。

――体が硬い人ほど、より効きそうです。

矢上:そうですね。体が硬い人に限らず、座りっぱなしや運動不足で、筋肉や関節が固まっている人にもおすすめです。たとえば、体全体に川が流れているとしたら、筋肉や関節が硬く縮んでいる場所は、川幅が狭くなります。そして水の通りが悪くなる。やがて、その場所にゴミが詰まって水は澱んでいきます。東洋医学では、その場所を「邪気」と呼んでいますが、邪気がたまると、そこに痛みが表れます。そこを刺激したり、指圧してほぐす行為は、その澱みにバッシャーンと大量の水を流し、いっきにめぐりをよくするのと同じなんです。

――今、この場でできる「自力整体」を教えてくださいますか。

矢上:イスに座ったままできるのが、「座っておこなう脇伸ばし」です。脇を伸ばすだけではなく、肩を左右にユラユラゆすることで、深い刺激が入り、血行やリンパの滞りをいっきに解消します。

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(ワーク名)肩コリ・首のコリに効く「座っておこなう脇のばし」
ねらい:脇腹がのびる感覚がベスト!
1,椅子に座り、両ひじをテーブルへのせる(両ひじは肩幅)。両手を合わせる。
2,お尻(椅子)を引いて、頭を気持ちよいところまでおろす。両手を首側にもっていく。肩を左右にゆする。
POINT! 肩を左右にゆすれば、より脇腹ののびと、ほぐれを感じることができます。

――このワーク(「座っておこなう脇伸ばし」)は、驚くほど肩と脇のコリがほぐれました。とくに肩を左右にユラユラゆする動きが気持ちよくて、やみつきになりそうです。ストレッチとも違う動きですね。

矢上:「自力整体」をストレッチだと思われる方もいますが、違うんです。筋肉をただ伸ばしているのではなくて、このワークのように、「伸ばして、ゆるめて、ほぐして、筋肉の緊張を取る」動きなんです。ムリして筋肉を伸ばすだけの動きは、自力整体ではないんですね。

――このワークは不思議とリラックス効果もありました。

矢上:この動きがおもしろいのは、肩コリ・首のコリにいいだけではなく、呼吸も深くなるためリラックス効果も高まります。たとえば、デスクワークの作業は、前のめりになって猫背になりやすい。そこで一番影響しているのが「呼吸」なんです。だんだん呼吸が浅くなって、体も頭も酸欠状態になってくる。

――たしかに、頭もぼんやりしてきます。

矢上:そうなると私たちは、ぐ~っと体を反ってみたり、伸びをしたりして、無意識に呼吸を深めようとします。

――だから反りや伸びは、すっきりした感覚を得られるんですね。

矢上:そうなんです。「自力整体」は、このぐ~っと反りや伸びをする動きを自分の力ではなく、重力を利用しておこなうから、より深く刺激が入るため、効果が高まるんです。