結束と別離──。東芝、日立製作所、米ゼネラル・エレクトリック(GE)という3社の間で、業界関係図が同時進行で塗り替わっていた。三菱重工業と日立の火力発電システム事業統合の発表から2カ月、東芝とGEも合弁会社設立に向けた覚書を交わした。そこに至るまでの内幕と、業界へのインパクトに迫った。
昨年5月、東芝の佐々木則夫社長と米ゼネラル・エレクトリック(GE)のスティーブ・ボルツ パワー&ウォーターCEOは、都内のホテル、ザ・リッツ・カールトンで会食をしていた。“勝利の美酒”を味わうためだ。
週刊ダイヤモンド2012年9月29日号で既報の通り、東芝-GE連合は三菱重工業との接戦の末、一大案件である中部電力の西名古屋火力発電所プロジェクトを獲得した。
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発電システムの中核を担うガスタービンをGEが提供し、東芝は蒸気タービンなど周辺機器の提供や、システム全体の調整を担当。品質の重要指標である熱効率で、世界最高レベルの62%をうたう発電システムをつくり上げた。
この成功体験を背景に、これまでも提携関係にあった2社は、さらに距離を縮める。しかし、「あと一歩、踏み込めないところがあった」(両社幹部)。というのも、GEは日立製作所とも火力発電システム事業で提携関係にあったからだ。「日立がいる手前、ある程度の等距離外交をせざるをえなかった」(GE幹部)。
ところが、昨年11月末にその状況は一変する。その日立がGEのライバルである三菱重工と手を組み、火力発電システム事業を統合すると発表したためだ。日立とGEは互いに別の提携先を持つ、「いわば二重の二股状態」(日立・GE両社関係者)に陥る。
この“異常事態”について話し合うため、昨年12月中旬、日立の藤谷康男・火力担当CEOが、東京・赤坂にあるGEの日本拠点を訪れていた。しかし、事業統合の発表から遅れること約1カ月。今までパートナーとして約50年間、火力事業を共にしてきたが、この空白期間は2社にとって別れを意味するのに十分な時間だった。