三菱重工業と日立製作所が火力発電設備中心の事業統合を発表。日本が世界で競争力を持つ重要な産業で、生き残りを懸けて国内3大メーカーの2社が手を結ぶ。期待の声が上がる一方で、課題も山積している。事業統合で誕生する新会社の経営陣には、過去の日本企業連合が陥った失敗を繰り返さない舵取りが求められる。
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「今度は本当なのか」
およそ1年4カ月前に大々的に報じられた、日立製作所と三菱重工業の全社合併。立ち消えになった当時の話を持ち出しながら、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンスの本社から日本の幹部へ確認が入った。
両社は電力システムなど、社会インフラ事業を手がける世界2強の重電メーカー。その彼らをグローバル競争で打ち負かすために、三菱重工と日立が火力発電設備中心の事業統合を発表したからだ。
LNG(液化天然ガス)や石炭を燃料とする火力発電で、主要機器となるガスタービンや蒸気タービン、その周辺機器であるボイラー(蒸気発生器)や発電機などを中心に本体から切り出し、新会社を設立する。
製品のラインアップという面では、大型ガスタービンの三菱重工と、中小型の日立。販売網の面でも得意地域で補完関係にあるため、「最強の組み合わせ」と日立の中西宏明社長は胸を張る。
新会社への出資比率は三菱重工65%、日立35%を想定していて、単純合算で売上高1兆1000億円規模の新会社が2014年1月に誕生する予定だ。
背景には先細っていくという国内市場の見通しがある。3.11以降、2社の主要顧客である電力会社の調達に対する外部の目は厳しくなり、競争入札が次々に導入。さらに電力会社の急速な財務悪化で、いよいよ以前のような金払いのよさは期待できなくなった。
世界市場へ出なければ自身も縮小せざるをえない。そこで、事業規模でも世界シェアでも水をあけられているGE、シーメンスの2社と戦うため、「日本企業同士の消耗戦」(大宮英明・三菱重工社長)を避け、手を結んだのだ。