東芝と米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、 火力発電システム事業において、合弁会社の設立を見据えた覚え書きを交わした。出資比率などの詳細はこれから詰めるが、両社は年内をめどに新会社の設立を目指す。
統合するのは、火力発電システム事業の本部機能のみとする方針。これまで日本やアジアに留まっていた事業提携の範囲を、一気に世界へ広げる狙いがある。
昨年11月には、同じ火力発電システム事業で三菱重工業と日立製作所が事業統合を発表。その対抗軸として、これまでの提携関係からさらに一歩踏み込むことを決めた。
これまで日本国内の火力発電システム市場では、三菱重工、日立、東芝の三つ巴状態が続いていた。そして、そのうちの2社、日立と東芝はどちらもGEと提携関係にあった。重要機器である大型ガスタービンを、GEからの提供に頼ってきた歴史があるのだ。
ところが、三菱重工と日立が事業統合を発表したことで事態は急変。日立は必ずしもGEに頼る必要がなくなった。
そのため、日立、東芝それぞれとGEとの提携関係が、今後どうなるのかに注目が集まっていたのだ。
今回の動きはその問いに答えるもので、火力発電システムに関して、GEの“脱日立”路線は明白になった。そして、業界勢力図は、GE−東芝連合と三菱重工−日立連合の全面対決という構図が鮮明化した。
一方、グローバル市場での競争を見ると、日本でこそまだ存在感が小さいものの、GEと世界シェアトップの座を争う独シーメンスの存在がある。
縮小が予想される日本国内市場ではなく、世界市場での生き残りを見据えた命懸けの戦いが本格化してきた。
三菱重工と日立の事業統合が引き金となり、火を吹き始めた産業再編。特に重電メーカーは、さまざまな事業で提携関係が複雑に結びついている。今回の東芝とGEの動きが、重電業界のさらなる再編を進める号砲となる可能性も高い。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)